No.059 フタユビナマケモノ – おもしろ哺乳動物大百科 9 貧歯目 フタユビナマケモノ

おもしろ哺乳動物大百科ペットコラム貧歯目

フタユビナマケモノ科

人間も含めゾウもイヌも多くの哺乳類の頚椎は7個です。ところがナマケモノは例外で、ミユビナマケモノは9個、フタユビナマケモノ7個、ホフマンナマケモノは6個とそれぞれ違うというからびっくりします。
ナマケモノの仲間は、前足の指が3本のミユビナマケモノ科と2本のフタユビナマケモノ科に大別され、フタユビナマケモノ科には、ホフマンナマケモノとフタ ユビナマケモノの2種類がいます。動物園では、食べ物のえり好みが少ないフタユビナマケモノ科のほうが飼いやすいので、多くの動物園でこちらの種類を飼育 しています。

フタユビナマケモノ

すんでいる場所とからだの特長

力をほとんど使わずぶら下がっています。写真家 大高成元氏撮影

南米の熱帯雨林の低地から高地にすみ、オトナはふつう単独か番(つがい)で生活しています。昼も夜も活動し、長い爪を木の枝にまるでハンガーのようにひょ いと引っ掛けて、逆さにぶら下がっていることが多く、睡眠は15〜20時間といわれ、そのほか食事から出産まで木の上ですべてをこなしています。樹上生活 に適応した体の特徴のひとつは、手首から先が細く、指の爪は長く頑丈で枝に引っ掛けて体力を使わず体重を支えることができることです。また、毛は腹部から 背中側に流れているので、雨が降ってぬれても、逆さまにぶら下がった腹から背を伝わって水が流れ落ちます。
地上をすばやく歩くことはありませんが、かぎ爪を巧みに使って枝から枝へ移動し、泳ぎも上手です。おもしろいのはおよそ1週間に1度の排泄のときは木から 地上に下りて、ほとんど同じ場所に排泄してからまた木の上に戻っていくことです。聴覚は良くありませんが、嗅覚が発達しており、肛門腺から分泌液される匂 いを嗅いで情報交換していると考えられます。
被毛は灰色で、細かい内側の毛と15cmもある粗い外側の毛の2重になっており、湿度の高い場合は体毛の中に藻類が生えて緑色となり、中に小さな虫やダニが数十種類もすんでいます。
尾は小さく毛で隠れて外からは見えません。外耳は小さく毛に埋もれ外部から見えづらくなっています。歯は上あごに5対、下あごに4対で、上下左右を合わせると18本あり、一生伸び続けます。乳頭は胸部に2つあります。

えさとからだ

ミユビナマケモノがセクロピア属の樹葉しか食べないのに対し、フタユビナマケモノは、木の葉や芽、果物から小動物までさまざまものを食べます。野生の食性 調査によれば、かれらは合わせて約100種類の木の葉を食べているのが観察されました。このように多種類の木の葉をたべることや1日の採食量が7〜 8g(ミユビナマケモノの例)と少量の葉で足りるため、餌不足になる率が他のたくさん食べる動物より低いことが、絶滅から免れている大きな要因の一つで しょう。胃の中はウシなどの反芻動物の胃のように複雑に分かれていて、中にいる腸内細菌がゆっくりと葉の粗繊維を分解したものを栄養としています。また、 外気温の変動に合わせ、体温が24℃から33℃まで変わることでエネルギーの消耗を抑えています。その反面、気温の低い日が続くと、体温が低下し腸内細菌 の活動が鈍くなり、胃の中に餌が充分にあっても未消化で残り、飢餓の状態となります。

繁殖

フタユビナマケモノは、4月、9月、11月以外は繁殖が報告されています。妊娠期間は約6カ月から
約1年まで(ホフマンナマケモノは11.5ヶ月)大変幅がありますが、これは精子貯留と着床遅延があるためと考えられています。1産1子で、子どもは全長 約25cm、体重300〜400g、体は約1cmの黒っぽい毛で被われています。目は開いており、歯は1年以内に生えそろいます。生後4週間くらいまで母親 の毛の中に隠れています。生後約10週間で母親の食べている葉を初めて食べます。生後9ヶ月ころ自分で爪を木に引っかけてぶら下がろうとします。その後、 母親はすんでいた木を離れ、子どもにその木をゆずり餌の心配から解放します。性成熟は、メスがおよそ3歳、オスは4〜5歳です。
寿命は飼育下では、スミソニアン国立動物園で36歳10ヶ月、ホフマンナマケモノはブロンクス動物園で34歳3ヶ月の報告があります。

外敵

人間が一番の外敵で、生息域の開発、道路によるテリトリーの分断、高速道路での事故、狩猟対象となっているほか、空から大型猛禽類のワシやタカ、地上ではジャガー、オセロット、他のネコ科動物などから狙われています。

データ

分類 貧歯目 フタユビナマケモノ科
分布 コロンビアからペルー北部、ブラジル
体長 55〜75cm(オス)
体重 4〜9kg
絶滅の危機の程度 2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定しています。
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