No.058 バードウイークとペット

動物エピソードペットコラム

日本の代表的な野鳥メジロです。写真家 大高成元氏撮影

毎年、5月になり愛鳥週間(バードウイーク・5月10日から16日)が近づくと、野鳥の雛を保護すべきか、そっとしておくか悩むことがあります。野鳥の雛が住宅の近所で地面に落ちて『ピーピー』と鳴いているのを見つけると、かわいそうだと保護し、どうすれば良いか問い合わせてくるからです。
現在、国内ではこの件に関して、鳥の生態に詳しい(財)日本野鳥の会や(財)日本鳥類保護連盟は、『野鳥のヒナは拾わないで』自然淘汰に任せてください、とポスターなどでキャンペーンをしています。

その理由は大きく2つあります。

  • 野鳥は雛が親のように飛ぶまでには、飛行訓練期間が必要です。巣立ちをしても、体力のない雛は疲れて地上に降りてうずくまってしまったり、ひと休みしたりする雛がいます。しかし、親鳥は近くで心配しながら雛の様子を伺っているのです。このとき善意で人間が雛を拾ってしまうと、親は雛が人間に捕まったと思いあきらめます。人間の親切心が飛行訓練の邪魔をする結果になっているのです。
  • ツバメやスズメ、ムクドリなどは1年に3腹(回)くらい産卵して、各1回に4〜5個の卵を産みます。これらがすべて成長すれば、一羽から1年で15〜20羽に増えて野山は小鳥だらけになるでしょう。ところがたくさん生む鳥はカラスやタカやヘビ、ネコなどの外敵も多く、彼らに捕まり成鳥まで生き残るのはわずか1〜2割です。ちなみに、海水魚のマンボーは数億の卵を産み、このなかで成魚まで残るのは数匹で、99.9・・・%はすべて海の生物の餌となっています。このように弱い動物たちは、死亡率の高さを数多く生むことで調節し、それらを餌にして生きている動物もまた多くいるのだ、と考えてください。

たとえば1羽の野鳥を保護すると、雛が成育したら飛行訓練を行い放鳥しなくてはなりません。しかし、人間が簡単に捕まえるような雛は、体力不足や怪我、先天的に欠陥がある場合が多いのです。放鳥できないときは寿命が尽きるまで10年から15年飼い続けなければなりません。以前本ホームページで紹介しましたが、保護しその個体の寿命が尽きるまで面倒を見るのはたいへんなことです。

(財)日本動物愛護協会では、主としてイヌやネコを対象にさまざまな保護活動を実行し、近年はこれらのペットに加えて多くの動物たちの愛護のために活動を繰り広げています。現在はペットが家族の中で占める役割はコンパニオンアニマルと称されるように高く評価されています。平成7年に(社)日本動物病院福祉協会が60歳以上の高齢者を対象に、ペットがどんな存在か、アンケート調査したところ約70%の人がペットを動物ではなく家族の一員としてみている、と回答しました。へーベルハウスの顧問をされている岡本利明氏は本協会の理事として活躍していますが、その中で「動物と共に住む住宅」を研究しています。この背景には、イヌやネコがこれまでの外飼方式から、室内で飼う方式が増加し、ペットもまた家屋の中でそれぞれの生態にあった部屋が必要と感じる時代が到来してきているからです。

さて、『野鳥のヒナは拾わないで』自然淘汰に任せてください、という主張とペットのイヌでは待遇が違うように思うかもしれません。しかし、およそ1万5000年前から人間はイヌの改良を重ね、今では家族の一員にまでその地位を上げたイヌと自然界で自由に飛び回っている野鳥では根本的に違うのです。高齢化社会、少子化傾向の進む現在、イヌやネコ、そしてその他家庭内のペットの存在は、家族の一員として重要な役割を担い、飼い主はそれなりの対応を彼らにする必要があるでしょう。

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