スタジオに入りテーマ曲「ダイアルダイアルダイアルダイアル〜回して〜」という軽快なメロディーが流れると、出演者一同今日はどんな問題が出るか、不安と期待で身が引き締まった。あの番組の面白さは、わずか30秒から1分前に質問内容が回答者にわかるというもので、回答者にとってはストレスがたまる番組だった。
生放送なので、どうしても判らないときは宿題ということで次回出演のときに持ち越せるのが唯一の救いだった。昆虫の矢島先生やお魚博士の杉浦宏先生たちは、豊富な経験と巧みの話術で人気回答者でしたが、私は平成元年から月に2回出演する許可を、園長と本庁に兼職承認の書類を提出して回答者の仲間入りを果たした。初めは電話のお姉さんの平野市子さんや科学の先生とご一緒する機会が多く、和田忠太先生や中村浩美先生、それにとにかく面白い毒蝮三太夫さんたちが巧みにフォローしてくださり、本当にうれしく感謝しておりました。
ところで20年間の間に即答できないで宿題にした問題が2問あった。一つは
「犬にノドチンコはありますか?」
という問題だ。
えーっと、思った瞬間、頭は真っ白になり、知らない、どうしよう! であった。この種の質問はイエスかノーの2者択一なので一番困る問題だ。
みなさんの中で犬を飼っている人は自分の飼っている犬にノドチンコがあるか確かめたことがありますか。
ご存知ならば恥ずかしいのですが、ともかく即答ができず宿題にして帰宅した。そして正解を家族の獣医師たちに聞いたところ、やはり「えーないと思ったけどねー」、とやはり意表つかれたようで、即答が出ません。それでも犬の解剖の本を取り出して、調べたところ図のようにノドチンコ(解剖学的には軟口蓋といいます)はあるのですが、人間のように長く垂れ下がっていなく、わずかに膨らんでいる程度でした。これではノドチンコのトラブルで動物病院にくる人もあまりいないので、わからないのも無理ありません。
さて、あと一問ですが、みなさん卵の黄身が2個入っている卵を食べたことがあるでしょう。質問は
「黄身が2つある卵は、双子が生まれますか?」
というものでした。もちろん、オスメス飼っていて、有精卵という前提ですが、これもまた、頭が真っ白です。というのは、有精卵ならば孵化する可能性があるからだ。しかし、卵から双子が生まれたなどという話は聞いたことがないし、どこかで実験して発表しているかも知れないし・・・と思ったのですが、即答しなければなりません。
「すみません。かえらないと思うのですが、確かめますので宿題にさせてください」
翌日、動物園で皆さんに聞いてみましたが、自信を持って回答できる人はいません。それでも畜産試験場に問い合わせてみたところ、胚はできるが中で競合して雛までは育たない、と教えていただいた。
ほんとうに子どもたちの質問は、意表をつくようなものがあり、その都度良い勉強をさせていただきました。こんな素晴らしい番組が消えるのはさびしい限りです。