No.045 秋は食がすすむなー

動物エピソードペットコラム

お父さん、そんなに食べたらメタボで病気になってしまうよ。かわいい娘にそう言われちゃあしかたがない、それでは柿でも食べるか。もう、本当に食欲だけはあるんだから。

四季がある日本で、冬に雪が積もるような北国や寒い地域で生活している動物は、秋になり寒さが増してくる頃から食欲が出てくる。それでもホッキョクグマは北極のマイナス50℃の気温にも耐え、凍え死ぬことはない。ホッキョクグマのように大きな体の動物は簡単に冷えないが、小さなシマリスなどマイナス50℃の世界ではたちまち凍死するだろう。
そこで外気温がマイナスになる地方では、冬越しする方法のひとつは、地下や樹洞にもぐりこみ冬眠する方法だ。しかし、地下にもぐれば寒さをしのぐことはできるが、外は雪や氷におおわれていれば食物をとることはできない。そこで秋に食物を巣穴にたくさん溜め込むシマリスのような仲間と、体に脂肪分として蓄えるヤマネのような動物が現れた。

写真は、写真家のさとうあきら氏撮影。
ニホンヤマネはこんな動物です。

今回は、このニホンヤマネのお話を紹介しょう。
写真でお分かりのように、ネズミとリスの中間的な姿で、齧歯(またはネズミ)目ヤマネ科に分類している。体格は体長約8cm、尾長約5cm、体重約25gという手のひらにのる程度の愛らしい動物である。現在、ヤマネの仲間は世界で11種類がヨーロッパ、中央アジア、アフリカなどに生息して、その中の1種が日本の固有種となっているニホンヤマネだ。
夜行性で、山や亜高山帯森林に生息する。冬眠期間は、ヤマネの研究で著名な湊秋作博士の浅間山で行った結果では、10月中旬から翌年の4月下旬までの6〜7カ月間と報告している。地域によって冬眠期間は違うこともわかっている。暖かい和歌山では、およそ4カ月間ということだ。日本に生息するイシガメやクサガメは外気温が15℃以下になると食欲がおち、12℃以下で冬眠に入るが、ヤマネの冬眠に入る温度は平均9度ということだ。

エゾシマリスの場合、秋にせっせと巣穴に餌を溜め込んで、途中で目が覚めると、食物を食べて、排尿と排便をしてまた眠る。じつは、ヤマネも10日から2週間に一度覚醒するが、シマリスのように食事はしない。どうしてそんなに眠ったままでいられるか、ということだが、これは秋にひたすら食べまくって脂肪を体内に蓄積し、後はこの脂肪を栄養源として生きている。もちろん、寝ている間は、体温を大幅に下げ、代謝を抑えているが、これは冬眠中だけでなく、活動期の日中も休眠して代謝や体温を低下することがあり、いずれにしても無駄なエネルギーは極力を使わないのだ。

彼らのえさは、チョウ、ガ、幼虫類、小鳥の卵、小動物を食べるほか、アケビの実などの果実、種子、花、新芽といった栄養価の高い植物を食べる雑食性の動物だ。しかし、盲腸がないため繊維質の多い植物は消化できないという。冬眠する小動物は昆虫や果実を主食とするものが多いのだが、これらは脂肪分として溜めるには良い食物なのだろう。

ニホンヤマネは夏の体重が15〜20gで、冬眠前に35〜40gまで太るんだって。お父さん、お父さん、あれテレビ見ながら冬眠している。

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