No.046 足のはこび

動物エピソードペットコラム

最近、孫がハイハイから進歩し、歩くようになった。みなさんは赤ちゃんがハイハイするとき、手足をどのような順序で動かして進むか、注意してみたことがあるだろうか。
はじめに左足が前に出ると、次に左手、それから右足そして右手と交互に動かし前進する。ところが、同じハイハイをするのでも歩き始めると、手足を出す順序が違ってくる。左足⇒右手⇒右足⇒左手となる。実はこの手足の運び方は、人間やサルなどに見られる順序だが、動物の種類によって違うのでいくつか紹介しよう。

先日、アフリカに行ってラクダに乗ってきた女性と話がはずみ、
「ところでラクダの乗り心地はいかがでしたか」とたずねたところ、
「気持ちよかった!また乗りたい」という返事が返ってきた。ラクダには背中のコブが一つのヒトコブラクダと二つのフタコブラクダがいるが、彼女はフタコブラクダに乗ったそうだ。そして、以前ゾウやウマにも乗ったことがあり、それぞれの飼い主に乗り方が上手だとほめられたという。動物はこちらが緊張し警戒しながら近寄ると向こうも同じように警戒する。もちろんどんな動物でもさまざまな癖をもっていて、飼い主はそれらの気質を飲み込んでいるので彼らの言うとおりに平常心で接するのが良い。動物好きの彼女は、飼い主の指示に素直に従い乗ったのが良かったのだろう。
「ところで、ラクダとゾウの乗り心地はウマと比べてどうでしたか」
と重ねて聞くと、
「やっぱりウマは背が低いし、乗りやすい鞍もあるから、ウマの方が楽かもね」
彼女の答えは、正しいのだが、実際には走る速度によって足の運びが違う。
一番ゆっくり歩く常足(なみあし)では、右後肢⇒左前肢⇒左後肢⇒左前肢の順となる。一分間におよそ110m歩くという速足(はやあし)は2倍、駆足(かけあし)は常足の3倍の速さで走り、足の運び方が違ってくるので受ける振動も違い、乗り手はそれぞれの歩き方に慣れる必要がある。さらに鐙(あぶみ)が重要な役割を果たしている。

ところがフタコブラクダ、キリン、ゾウ(図参照)は、同じ側の前肢と後肢を交互に出して歩く。オトナのゾウは一歩がおよそ2mの歩幅があり、乗っていると左右に大きく揺れることになる。ラクダも同じで、左右がガクンガクンと傾くような動きになるので、長距離を乗っていると、船酔いならぬラクダ酔いやゾウ酔いになる人もいる、という話だ。私は幸いゾウに長時間乗ってもゾウ酔いしたことはない。ゾウ使いがゾウに乗って酔っていたのでは仕事にならないのだが

こんなこともあって女性に聞いたのだが、動物の歩行について予備知識がなく、そんなことは意に介さず楽しんで乗ってきたようだ。

かつて、『アラビアのロレンス』というすばらしい名画があった。どこまでも果てしなく続く砂漠の魔力を秘めた美と、ヒトコブラクダを巧みに操る主演のピーター・オトゥールに感動し、今までに5〜6回も見た。

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