No.047 ネコの足

動物エピソードペットコラム

我が家のネコ、メメオ君は、音もなく近寄って足元にうずくまるので、ときどき踏みそうになる。
ペットの祖先はリビアヤマネコといわれているが、彼らの主食はネズミなどの小動物であった。彼らは獲物を捕らえるために音を立てないで忍び寄り、一挙に襲って捕らえる。そのためには、柔らかい体とすばやい動きが必要だが、音をさせずに歩行するために、ヒトの足とは大きく違う点がいくつかある。

もしネコを飼っていたら、自分の足の裏と、ネコの足の裏と比べてほしい。ネコの毛でおおわれた足の裏には、肌が露出した部分があり、これを肉球と呼んでいる。押してみるとかたく弾力性に富み、すこしザラついている。足の裏の毛は保温と共に滑り止めにもなる。さらに、体では肉球の周囲にだけ汗腺が発達しており、緊張すると汗がにじみ出て足の裏が湿る。私たちが手にツバをかけて物を握り、あるいは、昔は刀の柄に口に含んだ水を霧状にして吹っかけて滑らないようにしたが、同じ理屈である。この肉球については、家の中だけで飼っているネコと比べて、外も出歩くペットのネコは、表皮が厚く丈夫だ。ましてや、野生のネコ科動物では一段とかたく簡単には傷つかない。

もう一つの特徴は、かかとの位置だ。一番背の高いキリンとネコ、人間と比べてみるとおもしろい。
「メメオのかかとはどこですか」と孫にたずねたところ、人間と同じ位置を指した。実際には、ネコやライオンは、指が地面に着地しており、踵(かかと)は人間の膝と見える場所である。これは骨格を見れば一目瞭然だが、皮膚や毛でおおわれているとわかりにくい。

そこで、足の裏のどこが着地するかで、3つに区分けすることもある。人間はクマ、ウサギと同様に、足の裏を指からかかとまでべったりと付けて歩く。ところが、イヌやネコなどは足の指が着地し、踵は着かない。そして、ウマやウシは蹄となっている。

このように、足の裏一つ見ても、動物たちはそれぞれの生息地や、獲物を捕らえるため、あるいは、反対に肉食獣から逃げるために、長い期間をかけて進化し、生活に適応してきた。人間は衣服をまとい、靴をはくようになったので、足を傷つける機会が減少したが、野生動物にとって足はとりわけ大切な部位だ。ネコはたとえへーベルの立派な家だろうと、一向に飼い主に気も使わず、毎日柱や壁で爪を研いでいる。そして、定期的に爪はすっぽりと抜けて落ち新しい爪と変わる。じつに合理的な体のつくりだ。

サル山でニホンザルを観察していると、新生児が2頭で向かい合ってジャンプをしている。自宅で孫を見ていると、2歳の孫がさかんにジャンプ!ジャンプ!を繰り返している。
私にはとても付き合いきれないタフさだ。この時期、サルもヒトもこのようにして足腰を鍛えていくのであろう。

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