No.009 バードウイーク

動物エピソードペットコラム

ツバメが狭い病院の診療室を我が物顔で飛び回っている。保護したツバメを野生に戻す訓練をしているのだ。始めは部屋の中を一回りすると疲れるらしくすぐにどこかにとまってしまうが、日が経つにつれて少しずつ飛ぶ距離が長くなる。3羽も飛行訓練が始まるととんでもないことが起こる。

保護したムクドリ

何がおこるかと言えば彼らの糞の始末だ。1〜2時間毎に給餌しているが、採食後数分から30分も経てば排泄をするのだ。ツバメが便秘で3日も排便がない、などありえない。国内の野鳥が便秘だ、なんぞ聞いたことがない。便秘の話は別として、食べるとすぐにあたり構わず落とすのでその始末が大変なのだ。はじめは排泄する度にティシュ・ペーパーでふいていたが、とても間に合わないので、病室の家具や器具に全てシーツなどをかぶせて被ってしまった。これなら拾い残しもなく毎日洗濯をすれば清潔に保てるので良いのだが病室が異様な雰囲気となった。
やがて窓を少し開けておき蚊や虫が室内に入ってくると飛びながら捕らえて食べるようになる。ここまでくれば放鳥の準備完了となる。

放鳥はふだんツバメの集まる河川敷の様な所で行う。一直線に飛び立って行くときはほっとするが、すぐに近くの木に止まるときは心配でどうなるか確認するまで動けない。仲間を見つけ飛び立って行ったときは良かったと思う。これで一段落だ。

現在野鳥の会では、ポスターで野鳥のヒナは拾わないで、とキャンペーンをしている。
雛を拾わないで、とお願いしている理由は大きく2つある。

  1. 野鳥は巣立ちしても雛が親のように飛べるには練習が必要だ。疲れて地上に降りてうずくまってしまう雛もいるが、大概近くに親がいて心配しながら雛の様子を伺っている。このとき人間が雛を拾ってしまうと、親は雛が人間に捕まったと思うことだろう。人間の親切心が飛行訓練の邪魔をしているのだ。これがもっとも大きな理由だ。
  2. 野鳥のツバメやスズメ、ムクドリなどは1年の繁殖シーズンで1回に4〜5個の産卵を3回くらい行う。1年ですべて成長すれば、15羽くらいにもなる。実際にはこのように数多く繁殖する動物は外敵も多く、繁殖できるまで成長するのはわずか1〜2割で、残った生存個体が子孫を保っている。このように弱い動物たちは、死亡率の高さを数多く生むことで調整しているのだ。

スズメはいつの間にか慣れて手に乗っても平気になった。50cmくらいしか飛べないので放鳥できない。

人間が共同生活する上でやさしさは大切なことだ。それは相手が動物であれ、人間であれ同じだ。ただし、野生動物を相手にするときは、自然の摂理を踏まえた上でかれらと接することが大切だ、ということを理解してほしい。

私は自宅で、目の見えないムクドリの世話を13年間続けた。ネコがすぐそばで狙っていても見えないことが幸いし知らん顔で餌をついばんだり、水浴をしたりしてのんきに過ごしていた。現在は犬に噛まれ片羽を失って7年目を迎えるヒヨドリと、飛べなくなったスズメなど放鳥できない鳥の世話が私の担当だ。保護するには忍耐と根気がいる。

家づくりもそうかな?

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