No.010 動物の歯

動物エピソードペットコラム

キューンという歯を削る音は子どもたちに歯医者への拒否反応をインプットしていたね。私の場合、美食家ではないが、歯の手入れ不足が災いして年相応に再び歯医者通いだ。しかし、最近の歯医者さんは上手だね。ホント痛くないから早めに行った方がいいよ。

こんな犬歯で噛まれてはたまりません。写真:大高成元氏撮影

歯は動物によって生え方、本数、形、働きが違う。一般に、肉食獣、草食獣、雑食獣の3つに区分できる。

肉食獣の場合、餌を捕るときの武器の役割も果たしている。鋭い犬歯で獲物に致命傷を与えたり、喉を強力なあごの力で噛み窒息死させたりしている。咀嚼はしないので、獲物を飲み込める大きさまで切断するときに犬歯が役立つ。

草食獣は草が主食だが、草や葉をそのまま飲み込んだのでは消化が悪い。草には硬い繊維質がありバクテリアの力を借りて分解し栄養としている。バクテリアが分解するには、草をできるだけ細かく砕きバクテリアが取っ付き易くする必要がある。ゾウは乾草を25回くらいよく噛んで飲み込む。牛のような反芻動物は、一度胃に入った草をも一度口に戻し、噛み直し細かくしてから胃に送るので、草の消化率が高い。

雑食獣の最たるものは、人間だがクマもそうだ。人間も食べ物を良く噛んで飲み込めば消化が良く、噛まないで飲み込む人は、消化率が悪いのは当然だ。ちょうど肉食獣と草食獣の中間にあるので、イヌやネコより牙が鋭くなく、ウシやウマより臼歯が強くないが、どちらも使えるところが強みだ。

もう少し全般的なことを紹介すれば、アリクイのように歯が必要なく退化しているもの、カンガルーのように一生同じ歯を使うもの、人間のように乳歯から永久歯に生え変わるもの、ゾウのように一生の間に、5〜6回生え変わるものなど多様だ。

また、乳歯から永久歯に生え変わるとき、人間やサルの場合、乳歯の下から永久歯が萌芽してくるが、ゾウは後ろから前方に歯を押し出すようにして生えてくる。このため、古い歯は歯根部から離れるので、離れた部分は強く噛むと欠け落ちてしまう。人間のような交換の仕方を垂直交換、ゾウのような交換の仕方を水平交換という。

徳川三代将軍家光の兵法指南役、柳生飛騨守宗冬の墓から木製の上下総入れ歯がでた。日本ではすでに江戸時代初期に入れ歯の技術が開発されていたことになる。上野動物園ではロバに入れ歯を作った記録がある。戦功馬として、老後を上野動物園で過ごすために寄贈されたロバで、一文字山の戦いから「一文字号」と命名されていた。このロバは1963年、29歳のとき満足な歯は上下各1本になってしまい、歯医者の石上健次先生の協力で入れ歯を作った。この入れ歯はとても良くできており、ロバは再び草をもりもり食べたそうだ。

私はまだ総入れ歯までいかないが、将来このロバのような立派な入れ歯を歯医者さんに作ってもらおうっと。

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