No.060 マタコミツオビアルマジロ – おもしろ哺乳動物大百科 10 貧歯目 アルマジロ

おもしろ哺乳動物大百科ペットコラム貧歯目

アルマジロ科

アルマジロのなかまは、8属に分類され、合わせて20種類が生息しています。最大種のオオアルマジロは、体長75〜100cm、体重45〜60kg、尾長45〜60cmもありますが、最小種のヒメアルマジロは、体長12〜15cm、体重80〜100g、尾長2〜3cmで、両者で大きな差があります。いずれの種類も、体の表面が硬いヨロイのような皮膚でおおわれていることが特徴です。今回はマタコミツオビアルマジロを紹介しましょう。

マタコミツオビアルマジロ

すんでいる場所とからだの特長

筆者が上野動物園で撮影したものです。

南米中央部のサバンナ、乾燥林、森林の周辺部に、母子以外は単独ですんでいます。昼も夜も活動し、めったに穴は掘らずに、やぶの中で15〜20時間寝ています。アルマジロといえば体の表面を頑丈なヨロイのような角質の板や鱗甲板をまとっていることで有名ですが、表面が角質で、内側は骨板からできています。このヨロイは、種類によって背中に3本、6本、9本の帯があって、その部分を折り曲げることができるものや、あるいは、全身に硬いうろこ状になっている種類などがいます。しかし、完全なボール状に体を丸めることができるのは、ミツオビアルマジロ属のマタコミツオビアルマジロとミツオビアルマジロの2種類だけで、丸くなることで内側の柔らかい部分を守っています。普通は名前のとおり3本の帯ですが、ときには帯が2本や4本の個体もいます。

丸くなると、頭と尾が左右にうまくおさまっているのがわかりますか。

体を丸めるときは、ヨロイの中に、頭部、肢、尾の全てを入れることができ、外側は硬い甲板でおおわれます。指は前肢に4本、後肢に5本で、後肢の2、3、4指の爪は蹄のようです。歩行は前肢の爪を地面に突き刺さすようにして歩きます。(ちなみにオオアルマジロは前肢の爪を内側に曲げてナックルウオークのようにして歩きます。)被毛は鱗甲板の間に黒褐色の毛が生えています。歯はエナメル質と歯根部がなく伸び続け、上あごに9対、下あごに9対で、上下左右を合わせると36本あります。肛門腺がありいやなにおいを出して、個体間のコミュニケーションに使ったり、捕食する外敵からの防御に使ったりするようです。乳頭は胸部に1対あります。体温が33度から35.5度と低いのも特徴の一つです。

えさとからだ

6月から12月にかけての乾季には、強力な前肢で地面を掘り、あるいはアリ塚を壊してアリ、シロアリなどの昆虫を主食にしています。甲虫は一年を通して食べていますが、雨季になる夏は果物も食べます。動物園のえさは、根菜類やリンゴ、バナナ、ドッグフード、ゆで卵、ミールワームなどですが、繁殖期や成長期などで若干変えています。アルマジロは味蕾(みらい)がほとんどなく、発達した嗅覚を使って食べ物を探します。視覚も他の夜行性動物ほど良くありません。

繁殖

マタコミツオビアルマジロは、野生では10月から1月にかけて1産1子の子どもを産みます。シカゴのリンカーンパーク動物園の例では、10月から1月にかけて出産し、上野動物園の8例の出産例をみると、6月から2月までの間に生まれています。妊娠期間はリンカーンパークでは120日、上野の例では115日と116日でした。新生児の体重は70〜100g、目が閉じており、開くのは生後14日と22日の報告例があります。子どもは生まれて数時間以内で甲を丸めたり歩いたりすることができます。乳成分は他の動物に比べ脂肪分が多いのが特徴で、授乳はおよそ10週間続きます。生後しばらく甲板は柔らかく、親と同じ程度のような硬さになるには1年かかります。性成熟は生後9〜12ヶ月です。寿命はリンカーンパーク動物園で33年3ヶ月の飼育記録があります。

外敵

捕獲が容易なため食肉用として狩猟の対象になっています。野生の外敵としては、ジャガーやタテガミオオカミがいます。

データ

分類 貧歯目 アルマジロ科 ミツオビアルマジロ属
分布 ボリビア、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチン
体長 22〜27cm
尾長 7〜9cm
体重 1〜1.6kg
絶滅の危機の程度 2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないが、近い将来そのおそれがあるので、近危急種(NT)に指定しています。
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