No.019 食欲の秋

動物エピソードペットコラム

中学2年生の頃、先生がお汁粉を作るからと招かれ同級生5人で連れ立ってお邪魔した。トップがドンブリで4杯、あとの連中は私もふくめてそれぞれ3杯ずつ食べた。その旨さは格別でひたすら皆でご馳走になった。美味しかったし、嬉しかったなー。

インドの自然公園では美味しそうなカヤと木に枝が主食

陸上動物で一番の大食漢は言わずもがなゾウだ。ゆっくりと移動しながら餌を探し、およそ15時間をかけて草や木、竹などを食べている。草食獣の多くは体重のおよそ5%を食べるので、5トンのゾウは250kgの餌を食べることになる。ところが動物園で250kgも食べていたら、たちまち肥満となる。理由は簡単、野生状態で食べている食物より栄養価が高い上に、慢性の運動不足が災いして肥満となる。まるでメタボリック症候群に悩む現在のわが身を見ているようなものだ。話しを戻そう。本来ならば、餌探しに費やしていた時間が不要になるため、その時間の過ごさせ方が動物園の命題の一つとなった。理想を言えば、野外の野草や木の枝などを与えて短時間で食事が終わらないようにすれば良いのだが、毎日大量の餌を集めることは容易ではなく、どうしても乾草が主体となる。現在は家畜の乾草を使っているが野生動物用の栄養価の低い乾草があれば良いと思う。

20年以上前になるだろうか、北米の動物園で新しい試みがなされた。肉食獣が餌を捕るときの条件の一つとして、全神経を緊張させ食べさせようと考案し、餌をレールの上を走る台上に乗せるというものだ。しかし、与える時間を覚えると、その時間に餌が出てくるのを待つようになりあとはまた寝てばかり。そこで時間を不定期にしたところ、今度は餌の出てくる入り口で緊張しながら待ち続けストレスが溜まる。このように常に試行錯誤を繰り返し、どのようにすれば野生状態のような採食様式を取り入れられるか、今でも模索中である。

日本のように四季のあるところでは、多くの動物が冬に備え秋に食欲が増大し、十分に体力をつけたクマ、シカ、サルたちは発情して繁殖行動が活発になり子孫を残していく。とりわけ寒い地方の動物たちは、充分脂肪を体内に蓄えておかないと、年老いた個体や病気になった個体は厳しい冬を乗り切れず死に至ることも珍しくはないだろう。まさに大いに食べて太るべしである。

さて、私たちは動物とは比較にならないほど多種多様な物を食べているにもかかわらず、ニシキヘビの餌にウサギやニワトリを与えるのを見ると、なんて残酷なことをすると、たちまち抗議の電話がくる。肉食動物は生きている動物を食べ、獲物の内臓から肉まで食べることで生きている。ライオンがキリンを食べようが、ヘビがカエルやウサギを食べようが、それが自然の姿だと理解していただきたい。

人間ほど残酷ではないんだから。

わが家の家族には、1年中秋のように食欲が進すんでいるネコと人間がいる。人間だって体力は大事だからまあいいか。

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