No.095 シロエリマンガベイ – おもしろ哺乳動物大百科 45 霊長目 オナガザル科

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マンガベイ属

アフリカ西海岸のギニアからケニアまでの赤道沿いの森林に住んでいます。マンガベイの名前の由来は、フランスの博物学者ビュフォンがマダガスカルの地名・マンガベから来たサルと勘違いして命名したといわれます。今泉吉典博士は、本属(Cercocebus)を、ホオジロマンガベイ、ブラックマンガベイ、アジルマンガベイ、シロエリマンガベイの4種に分類していますが、学者によっては、ホオジロマンガベイとブラックマンガベイは、頭部に毛の房があり、体毛がやや長めであるところや生化学的な面からも差が見られるため、この2種を別の属(Lophocebus)とする学者もいます。
マンガベイ属は全て瞼が白く、ホオジロマンガベイ、ブラックマンガベイは樹上性ですが、他種は移動や採食に地上を利用しています。最近はマンガベイを飼育している動物園が少なくなりましたが、今回シロエリマンガベイを紹介しましょう。

シロエリマンガベイ

西アフリカのセネガルからガボンにかけて海岸線およそ180km以内で生息しています。昼行性で常緑の川辺林、沼沢林、湿地帯、マングローブに生息し、古い大木の樹冠も好み、地上で歩行するときは尾を背中に高く掲げるか、先端部を前方に曲げて1列で歩いているのが観察されています。
群れは成獣の雌雄とその家族の混成群で、10〜20数頭あるいは、これらが合流して40〜50頭で生息しています。オスは1日数回、とくに順位の高いオスが「ホウ、ホウ、ホウー」と大きな声を出します。オスの喉には共鳴袋があって、声が遠方まで届くので他の群れが呼応することもあり、テリトリーの主張や危険を知らせる場合に役立っています。飼育している個体のすぐ近くで録音した声を聞かせると、その場所から離れましたが、遠くの場合は無視しました。また、野生の観察でも近くで声がするとそこから移動し離れることから、お互いの位置確認に役立ち、お互いに近づき無用な争いを引き起こさないようにしている、と考えられています。

からだの特徴

キリリとしてきれいなサルでしょう。写真家 大高成元氏撮影

頭頂部に房があるのが特徴の一つです。頬から喉にかけてきれいな白色となっており、シロエリの名前の由来となっています。背は暗灰色、腹部は白色か灰色です。顔は長く口が突き出て、後肢が長く、跳躍力に優れています。
マンガベイの仲間では一番大型の種類で、大きな個体では15kg前後の報告例があります。性的二形が顕著で、オスの体重はメスの2倍近くになります。尾は枝に巻きつけて体のバランスを安定させるのに役立ちますが、体重を支えることはできません。
歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯2/2、大臼歯3/3で左右上下合わせて32本で、オスの犬歯はメスより長くて強力です。オスの尻だこは中央部でくっついていますが、メスは性器で両側にわかれています。頬袋もあります。

えさ

野生時の主食は、堅果と果実と種子で80%以上、その他、若葉、葉、キノコ、昆虫、無脊椎動物などを食べます。マンガベイは強い顎と歯でヤシの実も食べることができるので、同じテリトリー内にいるオナガザル科の仲間であるグェノンと一緒に生息することができます。

繁殖

月経周期は30日で、発情中のメスの性器と肛門周辺は腫脹し、臭いが強くなってきます。そして、積極的にオスに近寄り、そのうちの1頭と配偶関係に入り、数日間行動を共にしながら交尾をくり返します。性成熟はメスで3〜4歳、オスでは5〜7歳です。初産は4歳半(生後56.5ヶ月)で出産間隔は平均16.6ヶ月です。飼育下の出産は年中見られましたが、3月から8月が多くなっています。
妊娠期間は168〜173日、1産1子で、赤ちゃんはおとなと同じ体色です。22歳でも出産例があります。飼育下の寿命は20年以上です。長寿記録としては、ヒューストン動物園で2000年8月1日に死亡した個体の39年1ヶ月という飼育記録があります。この個体は来園時推定7歳と考えられているので、死亡時の年齢は推定46歳になります。

減少した原因

他種の動物たちと同様に、土地の開発により生息域を人間に奪われ、食料にするためワナや狩猟で捕らえられて大幅に生息数が減少しています。野生の外敵としては、ヒョウやワシの仲間がいます。ナイジェリアでは保護区を決め保護していますが、広さは約100kmしかありません。

データ

分類 霊長目 オナガザル科
分布 西アフリカ・セネガルからガボン
体長 オス45〜65cm メス40〜55cm
体重 オス7〜13kg メス5〜7kg
尾長 オス55〜75cm メス45〜65cm
絶滅危機の程度 国際自然保護連合(IUCN)発行の2010年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定されています。

主な参考文献

今泉吉典 監修 世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二 世界のサル 毎日新聞社1968
ジョン・R・ネイピア プルー・H・ネイピア
伊沢紘生訳
世界の霊長類 どうぶつ社1987
杉山幸丸編 サルの百科 データハウス 1996
林 壽朗 標準動物図鑑全集 動物Ⅰ 保育社 1968
Beacham, W. and Beetz, K.H.(ed) Beacham’s Guide to International Endangered Species Vol.1
Beacham Publishing Corp., Florida 1998
Nowak , R.M. Walker’s Mammals of the World Six Edition
The Johns Hopkins University Press ,Baltimore 1999
Parker, S.P. (ed) Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
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