No.041 ウンチの話 その3

動物エピソードペットコラム

一本の柔らかい管があり、両端が人間の意志で開け閉めできる。入り口が口で、出口が肛門だ。水や食物はこの管を通り抜ける間に栄養物を吸収されて不要なものや消化できないものがウンチとなり体外に排泄される。ウンチは汚いものと決めがちだが、生物にとってウンチはじつに多くの役割を担っている。アフリカのサバンナでゾウがウンチをすれば、フンコロガシをはじめ数千もの昆虫が群がってきて食べ分解する。消化できないで排泄された種子は新たに芽を出したり、ヒヒが拾い種子を割って食べる。

ところで、みなさんはウンチを食べる動物が身近にいることをご存知だろうか。草食獣の多くは、離乳期に母親のウンチを離乳食として食べる。この中には植物のセルローズを分解してくれる細菌がたくさんいて、ここではじめて腸内に入り、その後の消化が可能となる。もっとすごいのは大人になってもウンチを食べる動物がいる。ウサギは肛門の近くに大きな盲腸があり、口から入った食物は胃から盲腸にたどり着くと、腸内細菌と一緒にパックされ肛門から出てくる。それをウサギは直接口を肛門に付けて食べる。そして、再び口に戻った軟便は腸内細菌のおかげで発酵も進み消化できる。かつては、軟便だけ食べると考えられていたが、ビデオで24時間観察した結果、硬いふつうの便も午後2〜3時頃までに出たものは食べることがわかった。
そして、夕方から夜間にかけて排泄されるウンチが本当のウンチとなる。

昨年のオーストラリア旅行で出会ったコアラ。

もうひとつ糞食でよく知られているのがオーストラリアに住んでいるコアラだ。コアラはご存知のように、ユーカリの葉を食べているが、この葉には青酸が含まれており、コアラとフクロムササビ以外は食べることができない。彼らの肝臓は解毒作用があることや、盲腸が哺乳類中で最も長く、1.5mくらいあり、無数の腸内細菌がゆっくりとユーカリの葉を分解している。コアラの赤ちゃんは、生後6カ月くらいになると、育児のうから顔を出し、母親の排泄孔に口をつけて軟便をたべる。この軟便はパップと呼ばれ、約1ヶ月間排泄され離乳食となる。

ウンチ尽くしで恐縮だが、もうひとつウンチのお話をしよう。

コアラのウンチは10円玉と比べると半分くらいだ。写真はビーズに付けたコアラのウンチです。

野生のタヌキは何箇所かタメ糞の場所をもっている。動物のウンチは情報交換の場所になり、発情していれば匂いで判断できるだろし、雌雄の区別も恐らくできるだろう。むかしの猟師はこのため糞を見れば、タヌキが近くに潜んでいることがわかり、良い目印となったそうだ。雑食性の彼らの糞の中には、季節によりさまざまな果実の種や、タニシやカワニナの殻、鳥やネズミの骨などの一部が発見され、季節変化も知ることができる。これではタヌキ同士だけではなく、地元の猟師たちにも情報を提供しているようなものだ。

以前当病院で保護したタヌキがケージから脱出し、部屋の隅に、一晩のうちに同じ場所にドッサリと排便したことがあった。あの時は参ったね。
さあ、今日も快食快便、毎日ウンチをするにはたくさん水を飲み粗繊維の多い野菜を食べよう。

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