No.056 コアラ – おもしろ哺乳動物大百科 7 有袋目 コアラ

おもしろ哺乳動物大百科ペットコラム有袋目

コアラ科

オーストラリアの先住民アボリジニは、コアラをコラー、カラワインなどと呼んでいたのが、コアラの名前の由来といわれます。意味は「水を飲まない」という説と、「かみつくもの」という説がありますが、真相はわかりません。いずれにしても、水をほとんど飲まないコアラのふんは、楕円形で1個が約0.4g、1回に50〜60個を一日3回するそうです。
コアラの種類は1種ですが、寒い南方系のほうが北方系に比べ体毛が密になっています。オーストラリアは南半球なので、南のほうが寒いのです。

コアラ

すんでいる場所とからだの特長

オーストラリア旅行でとったかわいいコアラ。

ユーカリの森林にすみ、巣は作らず日中のほとんどは低いユーカリの枝に体を丸くして休息し、ときどき起きて葉を食べたり毛づくろいしたりします。夕方から夜間になると、地上も歩き1mくらいならジャンプするなど、けっこう活発に動いています。飼育下の調査例では、約19時間を休息し、起きている5時間中、採食時間に3時間費やしたと報告しています。
からだの色は灰色で、あごから胸、腹部にかけて白色か黄白色で、耳は表裏共に毛が生えています。鼻鏡と呼ばれる部分は鼻先から目元まであって、嗅覚が発達しています。

手足の指の説明は、文章より絵のほうがわかりやすいでしょう。

歯は30本あり、臼歯は四角で頑丈にできており、ユーカリの葉を咬むのに適しています。上あごの前歯は、6本で下あごの2本よりおおいのですが、この方が葉を食べやすいのでしょう。尾椎はありますが、外見から尾はほとんど見えません。
4肢にはそれぞれ5本の指があり、前足の第1指と第2指が他の3本と向き合い、木の枝を握るのに適しています。指にはするどいカギ爪がありますが、後肢の親指には爪がありません。後肢の第2指と第3指は融合し、指先で離れ爪はそれぞれにあります。オスの胸部には、鼻にツンと来るようなにおいを出す臭腺があり、胸部を木にこすり付けてなわばりの目印とします。

えさとからだ

オーストラリアの植物は90%以上をユーカリが占め、その種類は約600種あります。しかし、コアラが主食としているユーカリはこの中の約35種類、好んで食べるのは10数種しかありません。ユーカリの葉は、一般の動物には有毒となるユーカリオイルを含みますが、コアラは肝臓でユーカリオイルを解毒する機能があります。その上、哺乳類中最も長い、1.8〜2.4mもある盲腸にいる微生物がゆっくりと葉のかたい粗繊維を分解するので、栄養分として吸収することができます。

繁殖

交尾期は9月から12月で、ふだん大声を出さないオスも発情期になると、ブーブーやゴーゴーとブタかロバのような大声で鳴きます。また、胸の臭腺を頻繁に木にこすりつけなわばりを主張します。出産期は、12月下旬から4月上旬にわたり、樹上で生みます。妊娠期間は約35日間で、ふつう1産1子ですが、まれに2頭生まれます。
子どもは全長約1〜2cm、体重約0.5〜1gの未熟児で体に毛は生えていません。また、目や耳は発達していませんが、鼻孔は大きく嗅覚を頼りに、自力で育児のうまで這って行き、1対ある乳頭のひとつに吸い付き、その後約3ヶ月間は吸い付いたままです。育児のうは体の上方に向かって深くなり、出入り口は後方に開いています。
生後約3カ月後に目が開き、毛が生えてきます。生後約6ヶ月になると体重は300〜500gになり、親のように毛が生えそろって、育児のうから顔を出すようになります。このころ、母親の総排泄孔から盲腸で作られた緑黄色の軟便が出てきますが、これはパップと呼ばれコアラの赤ちゃんの離乳食になります。この離乳食は約1ヶ月間出ますが、この離乳食からユーカリを分解する腸内細菌を受け取ると共に、餌になるユーカリのにおいや味を覚えます。生後約7ヶ月で育児のうから出ますが、その後もときどき顔をいれて母乳を飲み、生後約1年で離乳し、体重は2kgを超えます。メスは約2歳、オスは4歳で性成熟に達します。寿命は、野生で10〜13年、飼育下では約15年です。

外敵

樹上では、オニアオバズク、オナガイヌワシ、ニシキヘビ、地上では、ディンゴ、キツネ、野生化したイヌやネコなどです。

データ

 分類 有袋目 コアラ科
分布 オーストラリア東部
大きさ オス:体長 70〜80cm 体重 7〜13kg
メス:体長 65〜70cm 体重 5〜10kg
絶滅の危機の程度 2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定しています。
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