No.055 コモンウォンバット(ウォンバット) – おもしろ哺乳動物大百科 6 有袋目 ウォンバット

おもしろ哺乳動物大百科ペットコラム有袋目

ウォンバット科

初めてウォンバットを見た人は、ブタやアナグマを連想するかもしれません。胴長でがっしりとしたからだで、歩く格好は鈍いようですが、意外に敏捷で、ケバナウォンバットの例では短距離ならば時速40kmくらいで走ることができるといわれています。オリンピックの100m走者より早いことになります。ふつうは夜行性で、繁殖期以外は単独で生活しており、他の個体と出会うのを避けています。自分からすすんで水に入ることはありませんが、泳ぎは上手でいわゆる「犬かき」で泳ぎます。
コモンウォンバット(ウォンバット)、キタケバナウォンバット、ミナミケバナウォンバットの3種がオーストラリアに分布しています。

コモンウォンバット(ウォンバット)

すんでいる場所とからだの特長

絶滅のおそれが少ないとはいえ、飼育下で繁殖させるのはむつかしいウォンバット。写真家、大高成元氏撮影

森林や沿岸の低木林の丘陵地帯、オーストラリアアルプスのヒース植物の生えている場所などにすんでいます。からだの色は、黒色からうすい黄褐色、灰色までバリエーションがあります。歯は一生伸び続け、あごを左右に動かして食べます。尾は短く、ずんぐりむっくりの頑丈な体型です。4肢にはそれぞれ5本の指があり、後肢の親指には爪がありませんが、他の指には頑丈な爪があって穴を掘るのに適応しています。巣穴は幅が1m前後、深さは3mくらい掘り、長さは3mから30mに及び、奥に草や樹皮で巣を作ります。彼らはそれぞれ10箇所くらいの穴を持っていますが、おもに使うのは3〜4箇所です。また、隠れるためにすばやく2mくらいの穴を掘ってそこにもぐりこむこともできます。汗腺が未発達で外気温が25度を過ぎる夏期には、暑さから逃れるため、日中は穴の中で過ごします。冬、外気温が4度くらいなると、昼間は外で草をたべたり、日光浴をしたりします。一日におよそ18時間を穴の中ですごし、リラックスして眠るときはいびきをかきます。

えさとからだ

主食は根、地下茎、イネ科の草、樹皮など繊維の多い植物でときにはコケ、キノコ、牧草も食べます。また沿岸に沿って食物を探すこともあります。飼育していた個体はサツマイモが好物でしたので、野生でも根菜類は好物でしょう。採食量は少なく、同じ大きさのカンガルーに比べると約3分の1で足りますが、その秘密は、腸にいる微生物が草の繊維を4〜9日間もかけてゆっくりと分解したものを、栄養分として取り込んでいるからです。えさは夜間3〜8時間かけて食べます。

繁殖

出産は1年中みられますが、タスマニア島では約50%が9月から1月に出産します。妊娠期間は20〜22日間で、1産1子ですが、まれに2頭生まれます。子どもは全長約1.5cm、体重約0.5gの未熟児で体に毛は生えていなく、自分で体温を維持できません。また、目や耳は発達していませんが、嗅覚がよく発達しています。自力で育児のうまで這って行き、大きな口と舌で1対ある乳頭のひとつに吸い付きます。育児のうは体の上方に向かって深くなり、出入り口は後方に開いています。生後約8ヶ月たつと完全に毛が生えそろい、育児のうから出て固形物を食べはじめます。生後12〜15ヶ月で離乳し、その後3〜8ヶ月で体重は倍になります。離乳後すぐに母親から別れるものや、完全に成長するまで母親と一緒に残るものなど個体差がありますが、ふつうは1歳半ぐらいまでには独り立ちし、約2歳で性成熟に達します。オーストラリア本土のコモンウォンバットの場合では、このころの体重は22kg程度です。飼育下の繁殖は難しく、繁殖の成功例はわずかです。
野生での正確な記録はあまりありませんが、10〜15年は生きるのではないかといわれています。飼育下ではドイツのハノーバー動物園で27年1ヵ月の飼育記録があります。

外敵

人間が一番の外敵で、ワナ、ハンティング、交通事故、森林の火事で死亡するほか、ディンゴ、キツネ、タスマニアデビルなどによって捕食され、子どもはフクロウにも狙われます。

データ

分類 有袋目 ウォンバット科 ウォンバット属
分布 オーストラリア南東部、タスマニア島とバス海峡のフリンダーズ島
体長 75〜115cm
体重 20〜39kg
尾長 2.5cm
絶滅の危機の程度 2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定しています。
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