No.054 タスマニアデビル – おもしろ哺乳動物大百科 5 有袋目 タスマニアデビル

おもしろ哺乳動物大百科ペットコラム有袋目

フクロネコ科

夜になると森の奥からウギャー、フーというぶきみな鳴き声とバリバリと骨をかみくだくなんとも恐ろしげな音が聞こえ、人々はこの声の主を「タスマニアの悪魔」と呼びました。しかし、鳴き声とはうらはらにこのデビルはかわいい子グマのようです。
かつてはオーストラリアにも住んでいたと言われていますが、現在はそこから南東部に約230km行った、北海道ほどの大きさのタスマニア島に住んでいます。今回はフクロネコ科の仲間からすばらしい悪魔を紹介しましょう。

タスマニアデビル

住んでいる場所とからだの特徴

強い歯をもったタスマニアデビル 写真家、大高成元氏撮影

タスマニアデビルの体長は50〜60cmで、海岸線から高山の森林まで広い範囲で生活しています。夜行性で昼間は岩穴や木の洞、やぶの中で休み、夕方から夜間が活動時間です。全身黒色か黒褐色で胸にはふつう白い帯があり、ツキノワグマの子どものようです。大きな獲物を食べるときや繁殖期以外は単独で生活しています。

体はがっしりとしていて、頭が大きく、あごには強い筋肉が付いています。歯は頑丈で硬い肉や骨を食べるのにむいています。頬には長いヒゲが生えていて、これらは触覚として働いていると考えられます。耳は毛でおおわれ、目は小さくて瞳孔は丸です。尾の付け根は太く、先端は細くなっていて全体に毛が生えています。前肢の方が後肢より少し長く、後肢の第1指はありません。鋭い爪は穴掘りのときに活躍します。育児のうの内部には4個の乳頭が付いています。

えさ

死肉から弱ったカンガルーの仲間、オポッサム、ウォンバット、鳥や昆虫類まで何でも食べます。餌を見つけると何頭もの個体が集まり、うなり声をあげてお互いに牽制しながら餌を食べます。とりわけあごの力は強力で、皮や硬い骨もバリバリかみくだいて食べます。死肉が腐る前には食べつくすので密林の掃除屋とも呼ばれ、食物連鎖の重要な役割を果たしています。

繁殖

タスマニアでは、3月に発情し、メスは首の周りに脂肪がつき、巣作りをはじめます。オス同士の戦いに勝ったものがメスとカップルになります。
妊娠期間は約31日で、産子数は1〜4頭(平均2.9頭)です。カンガルーと同様に、総排泄孔から体長が約1.2cm、体重0.18〜0.29gの未熟児で生まれた赤ちゃんは、自力で育児のうまで這っていきます。育児のうは、カンガルーとは逆に体の上方に向かって深くなり、出入り口は後方に開いています。子どもは母親の尻側から顔を出します。このために、母親が前肢で穴を掘っても土が育児のうに入りません。
赤ちゃんは生後約100日で体重が200g程度になると、育児のうから出てきます。カンガルーと違い、一度袋から出た子どもは再び戻りません。しかし、その後も授乳は続き、離乳は生後約8ヶ月たった11月〜12月ころです。1月にひとり立ちしますが、病気やワシやヘビなどに捕獲されて、生後1年目には半数になっています。生後2年で性成熟にたっし、2年目の3月には繁殖期を迎えます。野生のときの寿命は、5〜6年ですが、飼育下ではオランダのロッテルダム動物園で12年1ヶ月の記録があります。

タスマニアデビルの保護

ヨーロッパからの移民が1800年代に始まると、ヒツジやニワトリが殺されるので害獣として駆除してきました。フクロオオカミが絶滅すると、タスマニアデビルも保護しなければ絶滅すると考えられ、1941年に保護法が成立しその後は生息数も増加してゆきました。しかし、1996年ごろから伝染性のデビル顔面腫瘍性疾患が流行し、生息数は40%ぐらいまでに激減し、現在の生息数は4〜5万頭といわれています。
2008年の国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、絶滅危惧種(EN)に、オーストラリア政府は危急種(VU)に指定して保護しています。

データ

分類 有袋目 フクロネコ科
分布 タスマニア島
体長 50〜60cm
体重 7〜12kg
尾長 20〜30cm
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