ガラゴ属
ガラゴはのんびりとしたスローロリスとは対照的に、まるで瞬間移動するようにすばやく動くのが魅力の一つです。今から30〜40年も前にはペットとして愛され、一般の方も飼育していましたが、小型の種類ほど昆虫食が強いため、冬季になると餌に窮し飼育が難しくなり、飼い切れないことが多々ありました。
ガラゴ属はこれまで4種、(1)アレンガラゴ、(2)グラントガラゴ、(3)ザンジバルガラゴ、(4)ショウガラゴに分類していました。ところが近年の分類では、これまで種に分類していたものを新たに近縁属と位置づけ、次の4つの属:(1)アレンガラゴ属(2)デミドフガラゴ属(3)トマスガラゴ属(4)ザンジバルガラゴ属とする学者もいます。
ショウガラゴ(セネガルガラゴ)
ショウガラゴは、別名をセネガルガラゴ、あるいはレッサーブッシュベイビーなどと呼ばれ、7〜10亜種に分類していました。しかし、これらの亜種を整理し、ショウガラゴ(セネガルガラゴ)の近縁種として(1)ソマリアガラゴ(2)モホールガラゴ(3)ニシハリヅメガラゴ(4)マチーガラゴの4種を新たに種として認定している学者もいます。
西アフリカから中央アフリカ、ウガンダ、ケニア、タンザニアまで広く生息して、木の多い潅木林、川辺林、木が生えている草原などアフリカの多雨林を除き周辺を大きく取り囲むようにして生息しています。夜行性で日中は樹冠や樹洞、やぶの中に作った巣や古い鳥の巣で、成獣のオスは単独で、母系の家族はグループで寝ています。13箇所のねぐらを使い、約50%は決まった巣で寝ていたとの報告もあります。性成熟したオスの子どもは母親から離れてなわばりを持つようになります。なわばりはやがてメスも持ちますが、オスの方が広い地域をもって多くのメスと交尾するチャンスをねらっています。なわばりの印に、陰部や頚部、胸部を木にこすりつけるほか、尿を手足にためてこすりつけて歩く習性があって、この匂いが通過した後に残ってなわばりとなります。このほかコミュニケーションの手段として、鳴き声を警戒音や喧嘩、親子の会話などで合わせて25種類に分類した学者もいます。
からだの特徴
鼻鏡と手足の裏以外は、顔から体全体が短く厚い羊毛質の毛で被われています。夜行性動物特有のタペタムのある大きな目は、光を増幅して暗いときにも見ることができます。耳は大きくひだがあり、日中寝るときは折りたたむことができます。4肢には5本の指があり、後肢の第2指だけは鉤爪となりグルーミングをする時に使います。後肢が長く跳躍力に優れ、樹間を3mくらい跳び移りながら移動します。また両足だけでピョンピョンと跳ねて歩くこともでき、このとき長くふさふさした尾がバランスをとるのに役立っています。握力はとても強く後ろ足でぶら下がることも容易にできます。歯式は門歯2/2、犬歯1/1,小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。下顎の門歯は犬歯もふくめて櫛歯(くしば)になっています。乳頭は2対あるいは3対あります。
えさ
野生でのえさは、樹脂、昆虫を好みますが他にも、小動物、鳥の卵、果実などを食べ、大型のガラゴの仲間より動物食が強い傾向があります。昆虫は跳びついて捕まえますが、目の前を横切ると一瞬のすばやさで手を伸ばし捕まえることができます。聴力が発達しているので昆虫の羽ばたきを聞き、前方に向いた目で正確に捉えるのです。下顎の櫛歯は毛づくろいに使われます。
繁殖
ショウガラゴは1年に2回繁殖可能ですがその時期は地域によって異なります。南アフリカでは9月から10月と1月から2月、ウガンダでは12月から2月と7月が出産シーズンにあたります。妊娠期間は120〜140日です。発情周期は約32日で2〜7日間続き、この間の数日に交尾します。1産に2子が多く、1子や3子の例もあります。赤ちゃんの体重は約12gですが、生後1週間齢で2倍、1ヶ月齢で約5倍になります。出産時に目は開いており、体は厚い毛でおおわれています。10日前後で初めて巣から離れ、約1ヶ月で昆虫を捕まえることができます。母親は赤ちゃんを口でくわえて移動します。飼育下では11週授乳していました。オスの性成熟は約10ヶ月でその頃母親のもとから離れますが、メスはもっと長く母親と一緒にいます。長寿記録は1995年現在18年10ヶ月飼育されてなお生存中という記録があります。
天敵
ジャコウネコ科のマングースやジェネット、フクロウ、ヘビ、飼いネコやイヌなどがショウガラゴを捕食します。また一部地域では農地の開墾のために森林が伐採され生息地が減少しています。
データ
ショウガラゴ(セネガルガラゴ・ブッシュベイビー) | |
分類 | 霊長目 ロリス科 |
分布 | アフリカ:セネガルからエチオピア、ウガンダからタンザニア |
体長 | 13〜21cm |
尾長 | 20〜30cm |
体重 | 110〜300g |
絶滅の危機の程度 | 国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)になっています。 |
主な参考文献
今泉吉典 監修 | 世界哺乳類和名辞典 平凡社1988 |
今泉吉典 監修 D.W.マクドナルド編 |
動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986 |
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二 | 世界のサル 毎日新聞社1968 |
杉山 幸丸編 | サルの百科 データハウス 1996 |
Nowak, R. M. | Walker’s Mammals of the world Six Edition The Johns Hopkins University Press 1999 |
Estes, R.D. | The Behavior Guide to African Mammals The University of California Press 1991 |