No.083 ヨザル – おもしろ哺乳動物大百科 33 霊長目 オマキザル科

おもしろ哺乳動物大百科オマキザル科霊長目ペットコラム

ヨザル属

ヨザル属は、かつてヨザルとアザールヨザルの2種に分けていました。しかし、最近の分類では細分化する傾向にあり、これまで亜種にしていたものを種として認め8〜11種に分けています。今回は、ヨザルを中心に一般的な事柄を紹介しましょう。
ヨザルは名前のとおり真猿類(オマキザル、オナガザル、類人猿の仲間)の中で唯一の夜行性動物です。

ヨザル

ヨザル属は中米からブラジル中央部、ボリビア、パラグアイと広域に分布していますが、本種はコロンビア東部から南ベネズエラ、ブラジル北部に生息しています。熱帯降雨林、2次林、林縁部の樹上で、樹冠から林床まで縦軸をくまなく利用しています。夜行性で夕方から朝まで餌を求めて遊動と休息を繰り返しながら過ごします。日中は樹の洞やツタの繁茂したところで寝ています。両親とその子どもで2〜5頭の家族型の群れをつくり、採食のときに群れがいくつか集まって数十頭になることもあります。ペアは生涯にわたり続くという報告があります。群れの間では、餌を巡ってなわばり争いがあります。なわばりの主張は、尾の基部にある分泌腺を樹にこすりつけ、また、尿を手の掌につけて更に足の裏にこすりつける尿あらい行動で臭いをつけて行います。コミュニケーションの手段として鳴き声も使われます。ネコ科動物のようなうなり声は、のどにある共鳴袋を使い発せられ、1km先まで届くといわれますが、なわばりの主張には使いません。

からだの特徴

大きな丸い目でよく見えそうですね。写真家 大高成元氏撮影

体重は約1kgで真猿類の中では小型のサルです。本種は雌雄で体の大きさがあまり変わらないのも特徴の一つです。からだの色は背中、後頭部、4肢が灰色帯びた茶色です。大きな目の上に三角形の白い毛の部分と両眼の間とその外側の3本の黒か栗色の線が頭頂部で一つになっています。これら体毛や毛色の特徴や地理的分布、染色体数の違いなどから分類を細分化するようになりました。尾は毛が生えていて、巻きつけることはありません。体型はスローロリスに似ていますが、本種はすばやく動き、そのとき尾がバランスをとるのに役立っています。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪で、後肢で枝をつかむことができます。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。頬袋はありません。乳頭は胸部に1対あります。

えさ

食性は雑食性で、果実、花、葉、蜜、昆虫、クモ、などですが、動物園では、リンゴ、バナナ、ふかし芋、卵、ドッグフード、ミールワーム、バッタなどを与えています。

繁殖

飼育下の観察によれば、1年中繁殖可能ですが、出産は10月から1月に多く見られます。発情周期は約16日、妊娠期間は133〜141日、通常一産一子ですが、双子の例も時々あります。出産間隔は飼育下においては8ヶ月間隔で出産可能ですが、野生では約1年と報告されています。性成熟は雌雄共に約3歳、初産年齢は4〜5歳です。赤ちゃんの体重は約100g、生後1週間は母親と過ごす時間は授乳のときの約20%で、あとの約80%を父親が面倒をみます。父親は移動するときに赤ちゃんを抱き、授乳させるとき母親に渡します。

上野動物園の繁殖例では、うまれた日から父親に抱かれ、生後10日齢までは、授乳以外の時間を父親のお腹や背中をいったり来たりしていました。3週間齢になると背中におんぶして運ばれました。しかし、1例は父母共に育児放棄したため人工哺育しました。このときの赤ちゃんの体重は56g、生後4週齢で100g、130日齢で300gと増加していきました。その後哺乳を続けながら、固形物の餌として、生後38日齢で初めてバナナの薄切りを与え、65日齢から自分で採食させ、リンゴを食べました。127日齢で哺乳を中止し、ミルクを容器で飲ませ、180日齢で完全に離乳しました。

父親が育児に参加するのは、母親の体重がおよそ700gしかないのに、母親の体重に比べ60〜100gもある大きな赤ちゃんを出産直後から抱いて移動するのは体力的に負担が大きいためと推測されています。長寿記録は飼育下ではチェコのプラハ動物園で1974年11月から飼育されて2005年1月現在も飼育中という報告があります(飼育期間30年1ヶ月)。

天敵

フクロウなどの猛禽類、ヘビ、ネコ科動物がいます。

データ

分類 霊長目 オマキザル科
分布 南アメリカ
体長 30〜45cm
尾長 25〜45cm
体重 750〜1,100g
絶滅の危機の程度 国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。

主な参考文献

伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986
今泉吉典 監修 世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二 世界のサル 毎日新聞社1968
杉山幸丸編 サルの百科 データハウス 1996
神門英夫 ヨザルの人工哺育 どうぶつと動物園 (財)東京動物園協会1982
Cawthon Lang KA Primate Factsheets: Owl monkey(Aotus), Taxonomy, Morphology, Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center(University of Wisconsin) 2005
Nowak , R.M. Walker’s Mammals of the World Six Edition
The Johns Hopkins University Press , Baltimore 1999
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