No.084 コモンリスザル – おもしろ哺乳動物大百科 34 霊長目 オマキザル科

おもしろ哺乳動物大百科霊長目オマキザル科ペットコラム

リスザル属

リスザル属は、(1)コモンリスザルのほかに、(2)ボリビアリスザル (3)セアカリスザル (4)クロリスザルの4種に分けられています。リスザルが世界中の人々に広く知れ渡ったのは、1958年にアメリカが打ち上げた人工衛星に乗せ、最初に宇宙にいったサルとして名を馳せたからです。さて、南米の広い地域に分布している本種は、小型で人に馴れやすいため、ペットとして飼育されてきました。

コモンリスザル

リスザル属は中米と南米北部からボリビア、ブラジル中央部にかけての湿潤なジャングルに広く分布し、本種はコロンビアからアマゾン盆地にかけて生息しています。原生林や山地、マングローブ林、川辺林が生活の場で、果実や昆虫が豊富に手に入る場所を好みます。昼行性で早朝や午後から夜の涼しい時間帯に活動します。主に樹木の中間部を利用しますが、樹冠や地上にも降ります。移動は跳んだり、跳ねたりせずに四足歩行でします。新世界に住むサルの仲間で最大の群れをつくり、それぞれの群れは15〜130haと広い遊動域を持っています。群れの構成は、成熟オスが2〜4頭、成熟メスが5〜10頭とその家族で数10頭から50頭ですが、ときにはこれらの群れがいくつか集まり更に大きく数100頭になります。群れ同士は比較的争わず、単独個体は少ないようです。交尾期以外は、オスの集団、母親と幼児、子どもの集団の3つのグループに別れて生息しています。尿を手の掌につけて更に足の裏にこすりつける尿あらい行動で匂い付けを行いますが、この行動には群内の他のメンバーに自分の痕跡を残すこと、優位性の誇示、繁殖に関係するホルモンの伝達、枝をしっかり握る時のすべり止めなどの働きがあると考えられています。コミュニケーションの手段として鳴き声も使われ、外敵を見つけると警戒音を発します。

からだの特徴

背中にかわいい赤ちゃんがしがみついています。写真家 大高成元氏撮影

オマキザル科のなかで体重は最小の約700gです。体毛は短く、背中と4肢は黄色か黄緑色、腹部は白かうすい黄色、目の周りは白く、鼻から口にかけ黒いマスクをかけたような部位があります。また、前頭部には黒くとんがった切れ込みの部位があります。尾は長く、すばやく動くときにバランスをとるのに役立っていますが、物に巻きつけることはなく、先端の色は黒くなっています。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪で、後肢で枝をつかむことができます。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。第三大臼歯が小型になっているため顔が短くなっています。犬歯は性的二型でオスは鋭く大きくなっています。頬袋はありません。乳頭は胸部に1対あります。

えさ

食性は雑食性で、果実や昆虫を主食としていますが、その他に花、葉、蜜、クモ、なども食べます。動物園では、リンゴ、バナナ、ミカン、卵、ドッグフード、ミールワーム、コオロギ、バッタなどを与えています。

繁殖

これまで紹介してきたオマキザルの仲間であるタマリンやヨザルは、父親は育児の手伝いをしていましたが、本種は育児の手伝いはしません。そして、父親は交尾期以外、オスの集団で母親と別に生活しています。交尾期は乾季の8月から10月初旬の約2ヶ月間で、出産期は雨期となる2月から4月上旬です。群れによって、発情と出産期が同調する傾向があります。発情周期は7〜14日間で12〜36時間続きます。妊娠期間は152〜172日、通常一産一子ですが、まれに双子もあります。赤ちゃんは体重が70〜150g、生まれた日にお母さんの背中に乗ることができます。生後5〜6週間齢で少しずつ母親から離れ、周囲のものに興味を示します。5〜10週齢で固形物も食べ始めます。4ヶ月齢になると子供同士の遊びが増えてきます。生後1歳で母親からほぼ独立し、子どもは雌雄で遊びます。2歳になるとメスは成熟メスのグループを探しはじめ、この時期に性成熟に達します。オスの性成熟はもっと遅4歳〜6歳頃となります。長寿記録は飼育下ではアメリカのパームビーチ動物園で1971年7月から2001年10月まで30年3ヶ月の飼育記録があります。

天敵

ワシ、タカ、フクロウなどの猛禽類、ヘビ、ネコ科動物がいます。

データ

分類 霊長目 オマキザル科
分布 南アメリカ
体長 27〜37cm
尾長 35〜45cm
体重 オス750〜950gメス 600〜790g
絶滅の危機の程度 国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。

主な参考文献

伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986
今泉吉典 監修 世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二 世界のサル 毎日新聞社1968
杉山幸丸編 サルの百科 データハウス 1996
Welker,C. and Schaefer-Witt,C. New World Monkeys. In ( Parker, S.P. editor) Grizimek’s Encyclopedia of Mammals Volume 2, : McGrow-Hill Publishing Company 1990
Cawthon Lang KA Primate Factsheets: Owl monkey(Aotus), Taxonomy, Morphology, Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center(University of Wisconsin) 2005
Nowak , R.M. Walker’s Mammals of the World Six Edition
The Johns Hopkins University Press , Baltimore 1999
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