No.022 手の話(2) いろいろな動物の手

動物エピソードペットコラム

以前飼っていたネコのミーちゃんは、ネズミや小鳥を捕まえるのが上手で、やんわりとくわえてカミさんの部屋に持ってくる。夜の獲物は、ハタネズミやモグラだが、そっとくわえてくるのでダメージはない。ハタネズミなどは放されたとたん一目散に逃げ出し、格好の避難場所となるタンスの後ろに隠れるので、私もたたき起こされ寝ぼけ眼でタンスを動かし、ハタネズミの救出となる。

モグラの頑丈そうな手。
写真家 大高成元氏撮影

動物の手は、使い道によって少しずつ、いや全然というくらい違うものもいる。
モグラはご存知のように地下で生活するため、穴掘り名人だ。何しろ1頭で年間数百kgの土を掘りだすそうだ。その穴掘り用の手(前足)は、5本の指の横にもう一本小指を補強するような弓状の骨があってまるでグローブに頑丈な爪があるような感じだ。こんな頑丈な手と爪をもっているからこそすばやく穴が掘れるのだ。

ジャイアントパンダの手 – 奥の肉球が6番目、手前の大き目の肉球を7番目の手と言っている。写真家 大高成元氏撮影

余分な骨という点では、今ではパンダの方がメジャーで、手には5本の指のほかに6番目の指がある、と言われる。もちろん、本物の指ではなく種子骨が人間で言えば親指のような役割をしている。パンダの親指は人間のように物をつかむ配列ではなく、人差し指や中指などと同じ付き方で並んでいるので、物をにぎるときはこの種子骨を親指代わりに使っている。最近はさらに副手根骨が7番目の指の代わりをしているとの報告もあるが、見ていると竹くらいの太さなら6番目の種子骨を使ってにぎっているようだ。しかし、もっと太いものを持つときに役立っているのかもしれない。

マレーグマの飼育も担当したことがあったが、彼らの手もまた大きく爪も頑丈で長い爪を持っていて、私たちが苦心して作った藪もたちまち掘り起こされてしまった。かれらは蜂蜜やシロアリが好物なので、ちょっと探して見ただけだろうが私はがっかりし、狭い放飼場ではチップの方が良かった、と反省したものだ。

インドのダージリンにあるヒマラヤ動物園に行ったとき、ユキヒョウをまじかに見せてもらった。ユキヒョウはチベットやヒマラヤの標高2000〜5000mの山岳地帯にすむ動物で30〜90kgもあり、餌は主に野生のヒツジの仲間だ。このユキヒョウの掌は大きく、雪に埋もれた場所を歩くのに適応している。

ところでデスマンという名の動物をご存知だろうか。私は初めてこの名前を聞いたときホラー映画に出てくる怪人かと思ったが、調べてみるとモグラの仲間で、ロシアデスマンやピレネーデスマンがいることが分かった。川の近くで生活し、サカナや貝、昆虫から水生植物の根まで食べている。日本のモグラばかり見ていると、モグラは地下に住み、ミミズや昆虫が餌とばかり思っていたが、水中に潜って餌をとるモグラもいるのだ。そして、このモグラの手に少し水かきが付いている。ビーバーの手に水かきが付いていても不思議はないが、モグラにもあるとはびっくりだが手は生態と密接に関連している。

白魚のような手が憧れだったが、差し障りが在るといけないからこの話はよそう。

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