No.078 コモンマーモセット – おもしろ哺乳動物大百科 28 霊長目 マーモセット科

おもしろ哺乳動物大百科霊長目マーモセット科ペットコラム

マーモセット(キヌザル)科

マーモセット科は、今泉吉典博士(1988)によると5属(マーモセット属・ピグミーマーモセット属・タマリン属・ライオンタマリン属・ゲルディモンキー属・)18種に分類され、中米から南米まで広く分布している小型のサルです。
マーモセットとは、フランス語(marmouset)で、かつては「小さなもの」を指していたといいます。一方、マーモセットをキヌザルと呼ぶこともありますが、こちらはドイツ語に由来し「美しい毛」を意味しています。いずれの種類も小型で、頭胴長が15〜30cmほどのかわいいサルたちで、古くからペットとしても人気がありましたが、神経質な面もあり寿命を全うさせるのは困難でした。

マーモセット(キヌザル)属

マーモセット属は、コモンマーモセット、シルバーマーモセット、サンタレムマーモセット(または、フサミミマーモセット)の3種に分類しています。シルバーマーモセットは、体が全体に白い種類と、黒褐色の種類がいます。フサミミマーモセットは長い耳ふさをもつ種類と短い種類がいます。このように、和名と体の特徴は必ずしも一致していません。ブラジルの東部、西部、南部やパラグアイ北部などにおおかた種ごとにすみ分けています。

コモンマーモセット

顔の白い毛が美しいサルです。写真家 大高成元氏撮影

ブラジル東部の熱帯林や二次林にすんでいますが、乾燥した地域を好むようです。昼行性で1頭の成獣のオスとメス、及び子どもたちで群れをつくります。子どもは成長しても群れに留まり、10頭前後の群れとなりますが、家族が多くなっても子ども作るのは優位の雌雄だけです。夜間は木の洞や木陰で休息します。聴覚にすぐれ、人間では聞き取れない領域の30〜80kHzの超音波を出して交信する、という報告もあります。ちなみに人間の場合、高音は20kHzといわれています。視覚、嗅覚もすぐれています。

からだの特徴

体は背中が灰褐色で背中と大腿部の外側に灰色の横縞があります。尾は黒と白の輪になっています。耳周りに長いふさ毛があります。大きさは、頭胴長が25〜30cm、尾長が25〜30cm、体重は200〜500gでニホンリス程度の大きさです。後肢が前肢より短く、移動は樹幹をとびはねるよう身軽に移動します。4肢には5本の指がありますが、前後肢共に親指は人間のように対向せず、他の指と同様な向きとなっています。爪は足の親指だけが平爪で、あとは全て鉤爪となっています。睾丸や鼠径部に分泌腺があり、木にこすりつけてなわばりを主張します。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯2/2で左右上下合わせて32本です。下あごの骨がV字型で、門歯と犬歯の長さが同じくらいなのも特徴のひとつです。乳頭は胸部に1対あります。

えさ

野生では、樹脂、クモ、トカゲ、カエル、小鳥の卵、木の芽、花、花の蜜、果実などを食べますが、コモンマーモセットは他の種類に比べ昆虫食が強いと言われます。動物園では、コオロギやミールワーム、ゆで卵、煮干、ほかに果実類を与えています。

繁殖

一つの群れの中で、1頭のメスのみが繁殖します。父親や群れの子どもが育児を手伝う点が他のサルと違うところです。彼らは赤ちゃんを抱き、授乳のときになると母親のもとに連れて行きます。発情周期は約30日で、発情は2〜3日続きます。妊娠期間は140〜150日、1産に双子が多いのですが、飼育下ではまれに3〜4頭の出産が報告されています。出産期は、飼育下では1年中見られますが、ブラジルでは、10月下旬から11月、及び3月下旬から〜4月に多いと報告されています。新生児の体重は20〜35g、授乳期間は生後約100日くらいです。性成熟はオスが11〜15ヶ月齢、メスは14〜24ヶ月齢です。寿命は野生では約10年です。長寿記録としては、1978年9月から2001年7月まで22年10ヵ月間、飼育された記録があります。

天敵

農地の開墾のために森林を伐採し、大きく生息地が減少したほか、ペットにするための密猟で生息数が一部地域で減少しています。人間以外では、フクロウ、タカなどの猛禽類、ネコ科のマーゲイやヘビに狙われています。

データ

分類 霊長目 マーモセット(キヌザル)科
分布 ブラジル東部
体長 18〜30cm
尾長 17〜40cm
体重 230〜450g
絶滅の危機の程度 絶滅危機の程度:国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、保護区内での生息数が多く、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)になっています。しかし、一部の地域では、生息数が減少しており、早めの保護政策が必要としています。
CITES(ワシントン条約)付属書に記載され、商業目的の国際取引は可能ですが、輸出入にさいしては輸出国の輸出許可書が必要です。

主な参考文献

今泉吉典 監修 世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド編
動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二 世界のサル 毎日新聞社1968
杉山 幸丸編 サルの百科 データハウス 1996
Napier,J.R. Handbook of Living Primates, and Napier, P.H.
Academic Press, London 1967
Parker. S. P. (Editor) Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2
McGraw-Hill Publishing Company, New York 1990
Nowak , R.M. Walker’s Mammals of the World Six Edition
The Johns Hopkins University Press , Baltimore 1999
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