No.050 カモノハシ – おもしろ哺乳動物大百科 1 単孔目 カモノハシ

おもしろ哺乳動物大百科ペットコラム単孔目

哺乳類のおおきな特徴は、体には毛が生えており、体温が一定であることや、子どもを産んで乳を飲ませて育てることです。ところが、これらの定義には例外があり、必ずしもすべてが当てはまるとは限りません。哺乳類の仲間は、現在20の目(学者によっては21)に分類されていますが、各目の特徴と代表的な種類を紹介しながら、おもしろい動物たちの生活ぶりを紹介していきましょう。

単孔目

哺乳類の中で例外は単孔目の仲間です。単孔目とは、トリと同様に排便、排尿、交尾と出産はすべて総排泄孔(そうはいせつこう)と呼ぶ一つの孔で行われ、哺乳類の中でもっとも原始的な動物です。
この目にはハリモグラ科とカモノハシ科との2つの科があります。他の哺乳類と大きく違うところは、この仲間はすべて卵を産んで、お乳を飲ませて子どもを育てることです。
それではとりわけユニークな哺乳類カモノハシを最初に紹介しましょう
泳ぐカモノハシ
水中を行ったり来たりしているので、写真がうまく撮れませんでした。

カモノハシ

水中を行ったり来たりしているので、写真がうまく撮れませんでした。

カモのようなくちばしを持つ奇妙な哺乳類を見るのは私の長年の夢でした。それと言うのもオーストラリア以外の動物園ではカモノハシを飼育しているところがないからです。2007年、私は生息地のオーストラリアに行き、この奇妙な哺乳類を見ることができました。
最近のDNAの解析によれば、哺乳類は3億1500万年前に爬虫類と共通の祖先から分かれました。そして、卵を産む哺乳類で知られるカモノハシは1億7千年前、人と共通の祖先から分かれましたが、オスの爪にある毒は爬虫類のヘビの毒に似ており、性の決定に関わる遺伝子は鳥類、さらに哺乳類の特徴である母乳を作る遺伝子があるなど、3者別々の特徴を合わせもっていることがわかりました。このようにまさに珍獣の代表とも言うべき動物が、オーストラリア政府による自国の動物を海外に容易に輸出せず保護政策をとってきたことで、野生のカモノハシが守られてきたのです。

すんでいる場所

カモノハシは池や湖、川岸近くの水がよどみ、日陰になった場所にすんでいます。巣はふだんメスがすむ巣と繁殖用に使うものがあり、たいていは斜面になったところにあります。出入り口は、斜面の少し高い場所にあり、少々の川の氾濫では巣に水が入りこみません。

からだの特徴

そこで博物館に行き撮ったのが剥製です。毛が柔らかくびっしり生えているでしょう。

カモノハシのふしぎさは、口がカモのくちばしに似て平たい形をしていることです。このような哺乳類は他にいません。さらに、ビロード状でびっしり生えた体毛は水をはじき、足には水かきがあり、ビーバーのような平らで上面に短い毛が生えている尾をもっていて水中生活に適応しています。目は小さく耳介はありません。歯はありませんが、食べ物はくちばしの奥にある、角質板という洗濯板のような部分でかみくだきます。足は頑丈で、前後共に5本の指があり、鋭い爪は巣穴を掘るのに適しています。後足にある距(けづめ)は子どものときはオスメス共にありますが、成長につれてオスだけに残り毒液が出せます。

えさとからだ

友人の中里さんに持っていただきました。これなら大きさもわかるでしょう。

えさは、ミミズ、カエル、水生昆虫、エビ、甲殻類などを捕まえて食べます。そのときくちばしの左側にある電気を感じる器官で、獲物が出すわずかな電磁波をキャッチするのです。水中に潜っているときは目を閉じていますが、獲物が出す10万分の1ボルトの弱い電気を数10cm離れていてもキャッチすることができます。そしてくちばしの触覚器官でさわり捕らえるのです。

繁殖

交尾期は8月から10月ですが、気候は日本と反対になるので冬にあたります。抱卵はハリモグラが腹部に発達するひだ(ふ卵のう)で行うのに対して、カモノハシは巣の中で行います。繁殖用の巣は15m近いものもあり、一番奥に木の葉や草を敷き、産卵後10日間抱卵します。卵の大きさは1.4〜1.7cmで、ふつう2個産卵します。赤ちゃんは体長約1.5cm、体重約0.4g、無毛で目も見えなく、くちばしもできていません。子どもは母親の腹部からにじみ出た乳を飲んで育ちます。授乳は4ヶ月続き、この間は排泄、採食、体をぬらす以外は育児に専念します。子どもは毛が生えそろい体長30cmくらいになると巣立ちします。

データ

分類 単孔目 カモノハシ科
分布 オーストラリア東部・タスマニア島
体長 30〜45cm
尾長 10〜15cm
体重 0.5〜2kg
絶滅危機の程度 LR低リスク種・現在は絶滅危機ではないが、そのおそれがある種
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