ハリモグラ科
ハリモグラとミユビハリモグラの2つの属に分かれ、合わせて4種類がいます。ミユビハリモグラはニューギニアに住んでいます。ハリモグラは約5cmの短い吻(ふん・口の部分)を持ち、ミユビハリモグラは約10cmもある円筒状の長い吻をもっています。ハリモグラは硬いトゲがありますが、ミユビハリモグラのトゲは目立ちませんし、体も一回り大型なので両種は簡単に識別できます。
ハリモグラ科のうち今回はハリモグラを紹介しましょう。
ハリモグラ
すんでいる場所
湿気の少ない森林から荒野,乾燥地域までほとんどの環境で生活できます。ふつうは茂みの下、空洞になった丸太の中、石の下などにすんでいますが、繁殖時には1mぐらいの穴を掘って利用することもあります。夜行性で通常昼間は休み、早朝や夜活動します。走ったり、泳ぐこともできます。
からだの特徴
ハリモグラの体の表面は柔らかい体毛がびっしりと生えており、その間から太く硬い毛が全身を針のようにおおっており、一見ヤマアラシ風です。
オーストラリアのタロンガ動物園でハリモグラを見ましたが、行ったり来たり絶え間なく歩き、私の未熟な写真技術ではうまく撮影できませんでした。そこで博物館へ行って撮ったのがこの写真です。前後の足には5本の指があります。前足は太くて長い爪で、まるでモグラの足のようです。これでは穴掘りも得意と一目でわかります。オスの後ろ足のくるぶしのところには距(けづめ)がありますが、カモノハシの距(けづめ)とはちがい毒は分泌されません。
鼻孔は吻の先端の上部にあり、目は小さく視力はあまりよくありません。耳は楕円形の頭部のうしろのほうにあって、トゲと毛におおわれていて外部から見づらいのですが、縦に長い耳の穴があいています。卵のような形をした耳介はほとんど皮膚に埋まっています。聴覚は鋭いと言われます。
えさとからだ
トゲを持つアリクイとも言われるように、えさはシロアリ、アリ、ミミズなどで、地面や朽木、アリ塚からえさをとります。吻の先には小さな口があり、嗅覚と触角器官として使われます。舌は細長く唾液でぬれているためシロアリなどをうまく粘着できます。歯はありませんが、口蓋と舌の奥にある角質のひだでえさをすりつぶして食べます。
繁殖
距(けづめ)は外敵から身を守るときや繁殖期にオス同士が戦うときに使われます。メスは産卵期が近づくとふ卵のうとなるヒダが腹部にできます。抱卵期になるとこの部位の体温は上昇し、卵がふ化し、赤ちゃんが離乳すると元に戻ります。ふ卵のうの中でのふ化日数は約10日です。卵は柔らかい殻(から)で保護され、ふつう1個産み、大きさは直径約15mmです。赤ちゃんは体長約12mm、体重約0.4gで毛はなく目も見えません。赤ちゃんは毛が生えそろうまで育児のうに留まります。乳頭はなく乳腺からにじみ出る乳を飲んで育ちます。その後、約半年間授乳し、生後約1年で独立します。
飼育下では最高49年生きた記録があります。
データ
分類 | 単孔目 ハリモグラ科ハリモグラ |
体長 | 35〜55cm |
体重 | 2.5kg〜7kg |
分布 | オーストラリア、ニューギニア |
絶滅危機の程度 | ハリモグラ:LR(低リスク種。現在は絶滅危機ではないが、そのおそれがある種) ミユビハリモグラ:CR(絶滅寸前種。絶滅寸前の状態にある種) |