No.037 魚のすみか

動物エピソードペットコラム

子どもたちの質問に答えるとき、百科辞典のような答えのほかに、自分が体験したことを付け加えることで面白さが倍増するようだ。子ども時代、勉強はそっちのけで夏は海、冬は山で遊んだ経験が今ごろになって生きている。7月に入り梅雨の中休みともなると、海は自宅から目と鼻の先ということもあって、海パンにモリを片手に喜び勇んで出かけた。お目当ての魚は、主にブダイやメジナだ。ブダイは岩の下に入るとじっとしていることが多いので突ける可能性が高いが、一方のメジナは反対側からすり抜けて行ってしまうため突くのが難しい。

同じ場所を毎日のように泳ぐので、数キロにわたり、海底の形状や岩の大きさなどはおのずと頭の中に入っている。魚のすみかが分かれば、泳いでいる姿が見えなくとも、潜っていきひとつずつ心当たりの場所を探って行けば、魚に出くわす機会が増えてくる。初めてモリを持った頃は泳いでいる魚を必死に追いかけたが、彼らの動きがすばやくいくら泳ぎが得意と自負していても容易に突けるものではない。そんなことを繰り返しているうちに、彼らの潜んでいる場所を探した方が早いことを悟り、いっぱしの漁師気取りとなる。

トゲウオの巣 理恵画

メジナやブダイは巣を作らないが、鳥のように巣を作る魚がトゲウオの仲間だ。背中にとげがあるのでこの名がつけられた。トミヨという魚は、腎臓から出る粘液を肛門から分泌して、巣材にする水草になすりつけ固めていく。巣が完成すると、卵を持っているメスを探し、自分の作った巣に誘導する。メスが巣の中に入り、産卵するとすかさず今度はオスが入り、放精し受精させるのだ。その後も、卵に新鮮な水を送り込むために巣の入り口で胸びれを動かす。

ザリガニなども卵を持ったメスは盛んに新鮮な水を卵に送るが、水の中にいても酸素を充分供給すためには水の循環が必要なのだ。とくに巣を作る動物は人間のように意識せずとも、自然に空気の流れができるようになっている。たとえ水中で生活していても巣に新鮮な水が充分いかない場合は、酸素を充分吸収できない。そこでトゲウオのように直接新鮮な水を送り、巣の中の卵に十分な酸素を供給することになる。

動物の巣は、オランウータンのように一晩か数日の使い捨てのものから、ビーバーのように大規模なものまでいろいろあるが、どんどん遡っていくと魚までもが作っているから奥が深い。
最近は国内外で地震が続き被害も甚大だが、被災地の惨状を見るたびに科学が進んだとは言いながら自然災害に強い家屋に住みたいと、という願望とらわれる。このように考えると、地震に強いヘーベルハウスにして良かったとしみじみ思う。

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