No.036 ウンチの話 その1

動物エピソードペットコラム

入梅の時期になると、気温の変動が著しく体調管理が難しい。昨日は外気温が29度、今日は19度では、その度に半そでに替えたり、長袖を引っ張り出したりして着ている。人間はこれでも良いが、動物は冬毛が脱毛して夏毛に換わったときなど寒いだろうね。

タイの野生ゾウのウンチ。このウンチから推定すると若いゾウのようだ。

ウンチの話をすると、汚い、臭いとあまり話題にしたくないものだが、動物は食物を食べて胃や腸内で必要な栄養分をとったあとウンチとして排泄する。すべての動物に共通することで、至極当たり前のことだ。

上野動物園にいたころ、ゾウのウンチをサンプルに少し欲しいと依頼があった。本来ならば動物のウンチは病気を誘発する原因のひとつでもあり、集めて焼却処分している。しかし、大学からウンチの目的が研究用であると、正式な依頼があり受理した。やってきたのは寄生虫の研究をしている女子大生で、ゾウのウンチを見ると満面の笑みを浮かべながら近寄り、匂いを嗅いで薄いゴム手袋をした手でウンチをバラバラにし採取していった。

こちらは動物園で私が採集したもの。1個で1.3kgある大きめのゾウのウンチだ。

希望の動物のウンチが採取できることが嬉しかったのだろうが、それを若い女性が行っているところに、研究という確固たる目的が滲み出ているようでなんとも感心したものだ。

カイチュウ博士で有名な東京医科歯科大学大学院教授の藤田紘一郎先生と以前ラジオの電話相談室でご一緒した。先生は世界中の人たちのウンチを採集して回虫などの研究で大きな成果をあげている。著書も多い方だが、放送外の話がおもしろかった。たとえば、アジアの山間部でトイレが完備していない地方では、川の両側に民家が建ち、室内の一部が川にせり出しトイレになっている。ウンチが下に落ちると下では魚が群がりたちまち平らげる。夕方になると、その魚を釣ってきておかずにする、なんていう所もあるそうだ。

私はこんな民家に泊まった経験はないが、川沿いに家が建っている光景はたびたび見てきたがまさに水洗トイレだ。下流に行けば行くほど汚れるだろうと思うが、魚の食べ残しはもっと小さな生き物が食べるだろうし、工業排水や家庭排水で汚染されるより、はるかにマシかもしれない。

ミャンマーでゾウが丸太を引っ張るところを見たいものだ、と話をしていたら、じつに素晴しい人にめぐり合い案内してもらった。ミャンマー大好き人間の大西信吾さんとおっしゃる学者肌の紀行作家だ。彼の話によれば、ゾウの糞の脇を掘るとフンコロガシ(タマオシコガネの仲間)が下にひそみフンを食べているのだそうだ。現地の人々はそれを集め、油で揚げて食べるという。その味はやっぱり節足動物の仲間だけにエビやカニに似ており結構いけるそうだ。案内してもらったときは食べるチャンスがなかったが、多分私の口には合わないと思って、遠慮されたと思うが、良かった!

新聞をはじめ報道関係が最近とみにエコを強調しているが良いことだ。現代も食物連鎖をもっと活用して、残飯は細菌に分解してもらい、肥沃な土にして植物を育てる心構えを持ちたいものだね。

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