No.035 ビーバーのすまい

動物エピソードペットコラム

6月になるとたわわに実ったビワの美味しい記憶がよみがえる。山におじいさんのビワ畑があり数十本のビワが実るが、一挙に実るので孫からおじいさんや両親、おじさんたちと一族総出でビワを取った。木で完全成熟したものは最高で、木の上で食べていると、「食べるのは後で」と注意されたが、これはとる人の特権だよね。

ビーバーの赤ちゃんがおっぱいを飲んでいます。写真家 大高成元氏撮影

北米の緑豊かな森で名物な動物といえばビーバーだろう。彼らは川のほとりに木を積み上げ、やがて川の水がダムのようにせき止められると、池ができ、はじめに作った場所も池の中となる。池の中の巣には、水中を潜って入る出入り口が作られ、外敵となるオオカミやヤマネコも入り込むことはできない。まさに水上の城のようなものだ。

かれらはこのダムの構築と水中を潜るために体の各部位が進化した。たとえば、前歯は、下の歯が上の歯の内側をこするようになっており、こするごとに上の歯が鋭くとがれていく。この鋭利な歯は直径10cm程度のヤナギやヤマナラシの木なら10分もあればかじり倒してしまう。

ビーバーのすまいはこのように池の中にあり水中から出入りします。

この鋭い歯が役立つのは、彼らが自分たちの住居とダムを作るときだ。せっせと木を倒し、適当な長さに切断するとそれを川の水位より高く立てかけ、根元の部分には石やかじった木の端、ドロなど手当たり次第にかけて漆喰い状にしている。山のように積み上げた横から木をかじって出入り口を作り内部に入る。
川をせき止めるほど大がかりな工事を行うので、単独ではできない。彼らはネズミの仲間では珍しく家族単位で生活しているのだが、その背景にはダム作りを共同で行うことが関連している。家族はふつう両親と子どもたちの4〜8頭で生活し、子どもたちは両親の巣作りを手伝うことで将来自立したときに、この面倒な巣作りができるようになっている。
やがて水量が増えてくるたびに巣は補強されてどんどん高くなる。しかし、巣が高くなればなるほど、巣の上まで小石や泥水をかけることは困難になる。

ここのところが自然の妙味だが、天井の一部にちょっとした隙間ができることで空気の流通を助けることになる。住宅で換気が必要なのは良くご存知だろうが、地下にすむ動物は換気口を開けようと意識せずに、長い進化の過程でこの方法を獲得したのだろう。
一般には、ビーバーのダム湖とも呼ばれる大がかりな池は、乾季になっても簡単には水が涸れないが、大雨で大量の土砂が押し寄せダムが決壊したり、土砂で埋まったりするとまた他の場所に移動して新しいダム建設に取りかかる。方々にダムを作ることで洪水のとき、一時水を蓄える貯水池の役割も果たしているので、大きな目で見れば自然を守っていることになる。

人間のやることは、どうも間が抜けていることが多い。ダムを作って電力を得たのは良かったが、環境破壊の引き金となり、新たな災害を招く要因のひとつとなっている。そこに山や谷があるのは長い年月を経てできたことを忘れていませんか、っていうことだ。
ちょっと偉そうなことを言いすぎかな。

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