No.033 焼酎一杯グィー

動物エピソードペットコラム

これは私が言っているわけではない。マレーシアなどから渡ってくるセンダイムシクイのさえずりが「チカレタビー」とか、「焼酎一杯グイー」と聞こえ、この声を聞いたら「おっ!センダイムシクイ」がいるな、とわかる。実際には、「チョチョビー」または「チョチョチョ」とさえずるようだが、先入観があると表記のように聞こえるらしい。

庭でご馳走をついばむメジロ。写真家 鎌奥哲男氏撮影

さて今年もバードウイークになるが、そもそもの始まりは、1894年5月4日、北米でバードデーとして始まった。日本では1947年(昭和22年)4月10日第一回バードデーが実施され、1950年以降、5月10日〜16日までとなった。期間を1週間と長くしたのは、多くの人に愛鳥の意義を知ってもらい、また5月にしたことで春の遅い北国でもヒナを育てるのでこの時期になった。

私が上野動物園に就職したころ、小鳥の飼育係は松本喬史さんとおっしゃる方で、私より4歳年長の鳥キチと呼ばれるほどの鳥が大好きな御仁だった。

ヒヨドリはピィッ・ピィッ、ヒーヨ・ヒーヨと大声で鳴き、えさ台を独占する。写真家 鎌奥哲男氏撮影

いつも高円寺から一番電車で動物園に出勤し、夜警が寝過ごしている時などたたき起こし喜んでいた。メガネを外すと人の顔の輪郭しか分からない、と言うほどの近眼であったが、田舎出の私はいろいろと面倒を見てもらっていた。鳥の天敵となるヘビやネコは大嫌いで、野良猫が小鳥舎の近くに来ようものなら、血相を変えて追い払い、ヘビは捕らえて爬虫類舎にもっていった。
彼は園内にいる野鳥が一声鳴くと、正確にその位置をつかみ、「あそこにいる」と指差した。もちろん鳥の種類から雌雄まで声で判別できた。
このとき鳥の鳴き声をたとえ話でこうやって覚えるんだと教えてくれたのが、聞きなし、と呼ばれる表題の例だ。他にもたくさんあるが、ホトトギスは、「てっぺんかけたか」「本尊建てたか」「借金とったか」となる。メジロは「長兵衛、忠兵衛、長忠兵衛」。コジュケイは、ピッピョポィ、ピッピョポィが「チョットコイ」と聞きなされる。地方によっては「母ちゃん怖い」「母ちゃんかわいい」となる。怖いとかわいいでは大分違うように思えるが、この聞きなしを覚えると、そのように聞こえるからおもしろい。

仲の良いご夫婦はオシドリ夫婦と呼ばれ、時には結婚式の祝辞に出てくる。たしかに鳥の90%以上は雌雄共同で子育てをするが、生涯同じつがいでいるとは限らない。多くの種類は年に数回繁殖をするが、毎回ちがう雌雄で子育てをすることもある。そして、オシドリの場合、なんとオスは子育て協力せずにメスに押しつけて何処ぞにドロンしてしまうのだ。人間だって、いや人間の話は皆さんご存知なので省略しよう。

松本さんは33歳で急逝されたが、鳥の飼育にかけては専門家も舌を巻くほどの名人であった。バードウイークが近づきメジロやウグイスの心地よいさえずりを聞くと松本さんのことが思い出される。

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