No.080 ゴールデンライオンタマリン – おもしろ哺乳動物大百科 30 霊長目 マーモセット科

おもしろ哺乳動物大百科霊長目マーモセット科ペットコラム

ライオンタマリン属

本属は、ゴールデンライオンタマリン、ドウグロライオンタマリン(キンクロライオンタマリン)、キンゴシライオンタマリンの3種に分類されていますが、学者によってはこれらを亜種に分類する場合もあります。
3種は毛の色で区別できます。ドウグロライオンタマリン(キンクロライオンタマリン)は、たてがみと前腕、そして臀部が金色で他の部位は黒色です。キンゴシライオンタマリンは、臀部と大腿部が金色で他は黒色です。そして、ゴールデンライオンタマリンはその名が象徴するように、全身が金色で、たてがみをもったミニチュアサイズのライオンのような姿をした美しいサルです。マーモセット科の中では一番大型の種類ですが、それでも体重は600〜800gほどです。

ゴールデンライオンタマリン

生息地はブラジル南東部のリオ・デ・ジャネイロ州の大西洋沿いの一部に生息し、他のタマリンと生息域は重複しません。昼行性ですが、日中の暑い時間帯は休息し、早朝や夕方に活動します。3〜10mの樹上を生活空間にして、鉤爪を上手に使って枝から枝へ跳び移り、あるいは走りまわります。着生植物の繁茂している場所を好み、夜間はその茂みや樹の洞に隠れて眠ります。テリトリーはおよそ40ha以上とマーモセットの仲間では一番広い範囲を遊動しています。群れは2〜11頭の範囲ですが通常は3〜5頭です。群れの構成メンバーは繁殖ペアーとその子どもたち、及び成熟オスで、雌雄共に群れのメンバーはときどき入れ替わります。コミュニケーションに使う鳴き声は、超音波を含むさまざまな声を発し情報交換を行っています。なわばりの主張は、生後32〜40週齢から胸部、肛門、生殖器の分泌腺を木にこすりつけて行いますが、尿は他の種類ほど使いません。

からだの特徴

金色に輝くライオンのような美しいたてがみをもった小型のサルです。

全身が赤みがかった金色でおおわれて、頭部から肩にかけてマントのように長い毛があり、それがライオンのたてがみと似ているのでゴールデンライオンタマリンと命名されました。
4肢には5本の指がありますが、前後肢共に親指は人間のように対向せず、他の指と同様な向きとなっています。爪は足の親指は大きく平爪で、あとは全て鉤爪となっています。鉤爪があることで樹上を登り降りするときにしっかりしがみつけます。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯2/2で左右上下合わせて32本です。下顎の門歯(切歯)は犬歯より短く、犬歯が牙のようになっています。乳頭は胸部に2個あります。

えさ

野生では、果実、花、クモ、昆虫、カエル、小鳥、卵、トカゲ、カタツムリ、樹液、樹脂、などを食べる雑食性です。動物園では、いろいろな果物のほかに、鶏のササミ(煮たもの)、ゆで卵、ミールワーム、コオロギなどを与えています。

繁殖

飼育下の発情周期は2〜3週間ごとにみられ、妊娠期間は125〜132日でした。北半球では2〜8月、南半球では9〜2月に多く生まれます。北米のワシントンDCにある国立ワシントン動物園の例によれば、年に2回の出産が多く、出産例165頭の内訳は、双子が116頭、1子が41頭、3子が8頭でした。繁殖回数は、野生の場合、通常1年に1回ですが、栄養状態がよければ2回します。
母親は赤ちゃんを生後1〜2週齢の間、他のマーモセットの仲間と違い自分で運びます。その後、父親や群れの姉や兄が移動のとき運ぶのを手伝い、生後2ヶ月齢頃から自分で移動します。赤ちゃんの体重は50〜75gで全身を柔らかい金色の毛で被われていて、目は開いています。最初の2週間齢は授乳されるとき以外は眠って過ごし、やがて少しずつ周囲に目を向けるようになります。固形物は生後4週齢頃から食べはじめますが、授乳はその後、生後約3ヶ月齢まで続きます。性成熟はオスが約24ヶ月齢、メスは約18ヶ月齢です。母親は出産後、3〜10日経てば再び発情がきます。
寿命は飼育下で約14年。長寿記録では、1967年10月から1999年5月まで31年7ヶ月飼育された例があります。

天敵

人々が農地の開墾のために森林を伐採したことで生息域が激減したことに加え、姿が美しいため古くからペットにするため密猟で捕獲されて一時生存が危ぶまれました。人間以外では、フクロウ、タカなどの猛禽類、ネコ科のマーゲイやヘビに狙われます。

データ

分類 霊長目 マーモセット科
分布 ブラジル南東部
頭胴長 20〜35cm
尾長 30〜40cm
体重 600〜800g
絶滅の危機の程度 国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが非常に高い絶滅危惧種(EN)に指定されています。現在、保護政策が功を奏し、野生の個体数は約1000頭、飼育下で約500頭と推定されており、飼育下の繁殖個体を野生復帰する取り組みも実行されています。

主な参考文献

今泉吉典 監修 世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
杉山幸丸 編 サルの百科 データハウス1996
Cawthon Lang KA Primate Factsheets: Golden lion tamarin (Leontopithecus rosalia) Taxonomy, Morphology, Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2005
Kleiman , D.G. Mammalian Species No.148, Leontopithecus rosalia.
The American Society of Mammalogists 1981.
Parker, S. P. Editor Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2,
McGraw-Hill Publishing Company 1990.
Nowak , R.M. Walker’s Mammals of the world Six Edition
The Johns Hopkins University Press 1999
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