No.026 手を使った動物のおねだり

動物エピソードペットコラム

孫はスイッチを押すのが大好きだ。各種オモチャのスイッチから果てはテレビや電気のスイッチまで押しまくる。孫に甘い私は、孫の自宅では決して許してもらえないことでも、我が家に来ればなんでもOK、どんどん押させて喜ぶ姿を見てお互いに楽しんでいる。3歳までは自由にが目標だが、3歳になったら「ダメだ!」と言えるかなー。

みんなで上を見上げておねだりや食べ物が投げ込まれるのを待っている。

私は上野動物園勤務時代、サル山のニホンザルの担当も長く受け持っていた。40年前頃は入園者がお菓子をどんどんサル山の中に投げ込んでいたが、その餌を少しでも多く自分の方に投げ込ませようとして、彼らはそれぞれ独自の方法を編み出しアピールして入園者から食べ物を得ていた。

左手を手招のように振っておねだりしている。

傑作なのは、ヒバリと名づけたメスで、ある日拍手すると、入園者が喜んで食べ物を投げ込んでくれることに気づいた。これは、お辞儀をするよりパチパチと音がするので効果的である。2頭で並んで食べ物をおねだりしても、拍手をするヒバリに向かって入園者は投げる。

ヒバリが拍手をすると自然と周りにほかのサルが集る。他のサルが横に並ぶと投げ込まれた食べ物を横取りされるので、彼女は場所を移動しながらおねだりをしていた。

見事にピーナッツをキャッチしたところ。指の先にピーナッツが見えるでしょう。

サルの中には投げ込まれたピーナッツをパッと受け止めるものもいたが、ある日目の前を飛んでいたセミをすばやく手でキャッチし、あっという間に口の中にほうりこんでしまった。セミは好物の一つなのでとりあえず口の中に入れて仲間に取られないように安全な場所でゆっくり味わうのだ。

動物園のような狭い場所で飼育すると、ニホンザルも群れの中で強い家系と弱い家系が出てくる。野生では追いかけられれば逃げ場がたくさんあるが狭い放飼場ではたちまちつかまりよってたかっていじめられる。ハチドリという名のサルはメスで最強の家系の娘だった。おねだりするとき、一番良い場所に陣取り上を見ながら食べ物が投げ込まれるのを待っていたが、ある日、足の裏がかゆかったのか、ともかく足の裏を掻いた。するとその様子を見ていた入園者が大いに喜び食べ物を投げ込んだ。そこで彼女は時々足の裏を掻いては、アピールしてお目当ての食べ物をせしめていた。

このように手を使っておねだりする動物は他にクマがいるが、クマはせいぜい座って手招きをするくらいだ。それでも、何もしないでボケーとして待っているより、食べ物をもらえる率ははるかに高い。

現在は、飼育動物には食べ物を与えないようにお願いしている。理由は簡単、本来草食性の消化器官をもっているサルがお菓子ばかり食べていては肥満やさまざまな病気の原因となる。肥満はいけません。いやあなたのことではありません。サルの話です。

私の担当したインディラというゾウは、ある日背中のごみを払ってあげようと、竹ぼうきを振り上げたところ、鼻で巻き取られた。コラッと怒ったが、ゾウは悠然として竹ぼうきの柄を鼻でつかみ、背中をごしごしと掻いた。ゾウの鼻は手の役割を果たす。まさに孫の手だ。

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