No.147 オセロット – おもしろ哺乳動物大百科 94 食肉目 ネコ科

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ネコ科

オセロット

米国のテキサス州南部から中央アメリカのメキシコ、パナマをへて南アメリカのコロンビア、ペルー、エクアドル、ブラジル中部、西部、アルゼンチン北部に分布しています。標高1,200m以下の湿潤な熱帯雨林、密生した森林、藪が点在する乾いた荒野や川の土手沿いの沼地、河口のマングローブ林、山地の落葉樹や常緑樹の森林の中で様々な環境に適応して生活しています。休息するときは樹の洞や岩の割れ目、蔓の絡まった藪などを利用し、お互いに600~1,200m離れていますが、同性の個体同士が同じ場所で休憩するのも観察されています。狩りは主に地上で行われ、木登りと泳ぎが巧みなためこれらの場所でも行われます。夜行性で日没前から活動がはじまり、その後夜間の12~14時間が費やされ、曇天や雨天には日中も活動します。育児中は活動時間が長くなり1日に17時間に増加した報告があります。生息環境や雨季と乾季で活動時間帯に違い、雨期の方が日中の活動時間が長くなっていました。テキサスでは日中21%、夜間76%でしたが、中米のパナマ共和国、バロ・コロラド島では昼夜の区別なく活動していました。行動圏は生息地の環境により異なり、メスが0.8~15.6km²、オスは3.5~17.7km²と推測されています。ペルーにおける調査ではメスの行動圏は約2km²でしたが、オスはメスの数倍の広い行動圏を持っていました。成獣のオスのなわばりは通常数頭のメスのなわばりと重複しています。狩りをする場合は時速0.3kmとゆっくり移動しますが、オスがなわばりの境界を見回る場合、時速0.8~1.4kmと速度が上がります。ベネズエラでラジオテレメトリ―を付けた調査では、乾期の成獣オスは1晩に7.6km移動しましたが、メスは3.8kmでした。通常、交尾期以外は単独で行動していますが、ベネズエラにおいて交尾シーズンに7時間をオスとメスが共に過ごした、また、ペルーでは37回のうち19回は成獣とその子どもと思われる個体との間の交流であったとの報告もあります。昼間に活動する場合は獲物も昼行性の鳥やイグアナ、小型の霊長類が多くなります。獲物は鋭い聴覚や嗅覚、昼夜ともに良く見える目で獲物を探し捕えます。コミュニケーションは主にネコ科特有の頬部にある分泌腺を木や岩にこすりつけ、あるいは肛門嚢(のう)もあることから便や尿に匂いが付着した状態で排泄されます。これらの匂いを互いに嗅ぎ合うことでなわばりを察知しています。

からだの特徴

オセロットのこの姿、たまらなく好き、とファンが多いのもうなずけます。写真家 大高成元氏撮影

被毛の地色は生息地によって違い、中央アメリカと南アメリカの森林地帯に分布する個体は黄褐色が多く、乾燥した低木地帯の個体は灰色がかっています。体の長軸と並行に黒い斑点と縞模様が走り、腹部は白く黒点があり、尾には不完全な輪状の縞と斑紋があります。耳の裏側は白く(虎耳状斑)、音を聞く時に耳だけ動かし聞き耳を立てることができます。虹彩は褐色で瞳は縦の楕円形に収縮します。体の模様はアメリカに生息する小型のネコ科の中で最も美しいとされ、被毛は短く上毛が約10mm、下毛は約8mmです。頸部の皮膚は厚くなっており、噛まれたときの保護に役立つと考えられます。指は前肢に5本、後肢には4本で、それぞれにかぎ爪があり第2、3、4指の爪は引っ込めることができます。前肢は後肢より長くて力強く、掌は大きくて木登りに適しています。頭胴長は70~100cm、尾長28~45cm、体重7~15.5kgです。乳歯は門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯0/0、臼歯3/2の合計26本で、生後7~8ヶ月齢で永久歯にかわります。永久歯は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯2-3/2、臼歯1/1で合計28~30本です。乳頭は4個あります。

えさ

主食はオセロットの体重の1~3%以下の小型哺乳類で、おもにトウネズミ、アナホリトゲネズミ、コメネズミなど夜行性のネズミのなかまです。大きな獲物としてはパカ、アグーチ、オジロジカやペッカリーの子ども、ウサギ、イグアナの子どもやヘビ、陸生のカメなどの爬虫類、さらに泳ぎも上手なことから産卵期の魚類、カニ、両生類のカエルから昆虫まで幅広い種類を餌とします。餌の割合は小型の齧歯類が65%,爬虫類が18%,甲殻類7%,中型の哺乳類6%,鳥類4%の報告があります。彼らは獲物を捉えるために1ヵ所で30~60分間も待つことがあります。小さな獲物は頭から食べますが、大きな獲物は頸部を咬み、殺してから腹部や肢、臀部から食べはじめ、食べきれなかった餌は隠しておき翌晩また食べに来ます。

繁殖

メキシコのユカタンでは10月交尾し1月に出産しますが、テキサスでは9月から10月に出産し、熱帯地域では決まった繁殖期はみられません。発情周期は平均25日、発情は平均4.6日間続きます。妊娠期間は79~85日、1産1~3頭で通常2頭を出産します。出産場所は深い茂みの中や木の洞、岩の隙間などで数週間はその中に留まっています。テキサスにおける生まれたばかりの子どもの全長は23~24.8cm、尾長5.5cm、体重200~276gでしたが、他にも体重については200~340gの報告があります。新生児にはすでに斑紋がありますが、体色は成獣とは異なり全体に灰色で肢の下部がほとんど黒色です。数ヶ月後に初めは頸部から徐々に成獣の体色に変ります。新生児の目は青色ですが、約3ヶ月齢で褐色に変ります。目は閉じて生まれ、生後約14日齢で開きます。約3週齢で歩行ができるようになり、4~6週齢で巣穴から出て母親の狩りに同行します。生後約8週齢で固形食の肉を食べ始めますが、授乳は3~9ヶ月間続きます。育児はすべて母親が単独でおこないます。メスは生後18~22ヶ月齢、オスは生後30ヶ月齢頃に性成熟に達します。子どもは2~3歳で生まれた場所を去ります。
国内の繁殖記録によれば、1977年8月に生まれた子どもは、生後7日齢で腹ばいになり自力で這い、生後13日齢で目が開き、親の肢や尾でじゃれて遊ぶのが生後31日齢。馬肉や新鮮な内臓などの固形食を食べ始めたのが生後51日齢。生後61日齢の体重は、オス1.95kg、メス1.91kg、86日齢でオス2.85kg、メス2.95kg。184日齢でオス7.9kg、メス7.0kgと報告されています。
長寿記録としては北米のアリゾナ・ソノラ砂漠博物館で1975年8月に生まれ、2003年10月にフェニックス動物園で死亡した個体(メス)の28歳2ヶ月があります。

データ

分類 食肉目 ネコ科
分布 北アメリカ南部、中央アメリカ、南アメリカ
体長(頭胴長) 70~100cm
体重 オス 7~15.5kg メス 6.6~11.3kg
尾長 28~45cm
絶滅危機の程度 分布域の消失と分断が大きな減少要因ですが、オセロットの場合、とくに毛皮の模様が美しいことや人に順化しやすいことから毛皮やペットに利用するために乱獲されてきました。本種は分布域が広く、パラグアイやボリビアにまだ一定の生息数がいることなどから、一部の亜種を除き種として現在は絶滅の危機は少ないと判断され、国際自然保護連合(IUCN)発行の2012年版のレッドリストでは、軽懸念種(LC)に指定されています。またワシントン条約では付属書の第Ⅰ表に該当し国際商取引の禁止対象種となっています。
現在、生息地による違いから10亜種に分類していますが、この中でテキサス南部からメキシコ北東部に生息する亜種は、テキサスでの野生の個体数が100頭以下と推定され、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いとされ、米国魚類・野生生物局は絶滅危惧種に指定し保護しています。

主な参考文献

Murray, J.L. & Gardner, G.L. Mammalian Species . No.548, Leopardus Pardalis.
The American Society of Mammalogists 1977.
林 壽朗 標準動物図鑑全集 動物Ⅰ 保育社 1968.
今泉忠明 野生ネコの百科  データハウス 1993.
Nowell, K. & Jackson, P.(ed) Wild Cats―Status Survey and Conservation Action Plan― IUCN 1996.
ジョン・ボネット・ウェクソ編
増井光子訳・監修
ライオン/ネコ 誠文堂新光社 1985.
小林和夫 オセロットの繁殖 どうぶつと動物園 Vol. 30 No.8 (財)東京動物園協会 1978.
成島悦雄 ネコ科の分類 In世界の動物 分類と飼育 □2 食肉目 (財)東京動物園協会 1991.
Nowak, R. M. Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.(ed) Handbook of The Mammals of The World. Vol.1 Carnivores. Lynx Edicions 2009.
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