No.139 ミーアキャット(スリカータ) – おもしろ哺乳動物大百科 87 食肉目 マングース科

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マングース科

マングース科をジャコウネコ科に含めてマングース亜科とする分類学者と別の独立した科を設けてマングース科とする学者がいます。本稿は基本的に今泉吉典博士の分類に従っているのでマングース科として17属37種とします。一方、マングース亜科とする学者は13属33種としています。
マングース科の中で大型の種としては、アフリカに生息するシロオマングース属のシロオマングースとエジプトマングース属のエジプトマングースがあげられます。前者は体長47~69cm、体重が1.8~5kg、後者は体長45~60cm、体重1.9~4.0kgとなります。一方小型の種としては、コビトマングース属のコビトマングースがあげられ、体長18~28cm、体重210~350gです。
分布域はアフリカ、中近東、東南アジアに広く分布しており、ふつうは早朝や夕暮れ時に活動する薄暮動物ですが、ミーアキャットやクシマンセのように群れで昼間活動する種、また、夜間を単独で活動するハナナガマングースがいます。
体形はキツネのようにとがった顔と小さな耳、長い尾、短い4肢で指数は4~5本、爪は引っ込めることができません。ジャコウ腺はありませんが、肛門腺と頬腺をもつ種がいます。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3~4/2~4、臼歯2/2で左右上下合わせて34~40本です。乳頭は腹部に2~3対です。肉食性で昆虫、爬虫類、鳥類、卵、甲殻類、軟体動物、無脊椎動物を食べます。
今回は日本でも飼育している動物園が多いスリカータ属とシママングース属の2属を取り上げ紹介していきましょう。

スリカータ属

スリカータ属は1属1種でアフリカ南部にミーアキャットが生息しています。生息地により3亜種に分類されます。

ミーアキャット(スリカータ)

南アフリカ、アンゴラ、ナミビア、南ボツワナに分布しています。岩や石の多い開けた荒れ地や開けた半乾燥地帯、やぶ、牧草地、草地に生息し、地下にトンネル状の巣穴を掘って生活しています。巣穴はトンネルと部屋が連なる大規模な構造となっており、夜の寒さや避難場所として役立っています。その内部は、深さ1.5~2mで長さが約5m、それぞれ5ヶ所程度の出入り口があり、それらがいくつか連結し25~30mの長さになり、その中には共同トイレもあって迷宮のようになっています。血縁個体からなる家族集団で暮らしていて、この集団をパックと呼び高度な社会を持っています。パックは雌雄のペアか家族単位で形成され、時には数家族が合流し10~30頭の群れで活動します。パックの頭数は生息地により若干の差があり、南アフリカのオレンジ自由州(OFS=OrangeFreeState)における8パックの平均頭数は11.3頭(9~17頭)で、その内訳は成獣オスが5.4頭(2~9頭)、成獣メスが4頭(1~7頭)、子どもが0.75頭(0~2頭)、そして亜成獣が1.1頭(0~4頭)でした。行動圏は平均5km²(2~10km²)ですが、カラハリの行動圏は広く、12のパックの平均は15.5km²でした。1日に約6kmを移動し、巣穴は数日毎に変えますが、育児中は長期にわたり利用していました。また、危険が迫ると彼らのなわばり内にある1000ヶ所以上もある巣穴に逃げ込みます。活動時間は日の出から日没までの昼行性で、夜間は巣穴で過ごします。寒さが苦手なので日が昇り気温が上がると、巣穴から出て太陽に向かってメンバーが一列に並び、尾を支柱にして後足で立ち上がり日光浴をします。移動は歩くか、走る場合はジャンプしながら走り、木登りはしません。声によるコミュニケーションも盛んで、威嚇のうなり声、子どもをたしなめる声、いくつかの警戒音などおよそ10種類が報告されています。外敵となる猛禽類を見つけるために視覚が発達していますが、聴覚は人間ほど良くありません。嗅覚は地下の餌を見つけるときに使うので鋭敏です。

からだの特徴

みんな仲良く並んで記念撮影ですか?写真家 大高成元氏 撮影

頭部が丸く目は前方についており、胴長で体長は25~31cm、尾長19~24cm、体高約15cm、体重は620~970gです。4肢は細く、それぞれ第1指が欠如し4本の指があり、前足の爪の長さは後肢の2倍の約1.5cmありますが、引っ込めることはできません。体の色は上面が灰白色、灰褐色、黄褐色で約10本の暗褐色の横縞があります。頭部と喉部は白、鼻端、耳、目の周囲は黒です。毛は柔らかく、長さは肩部が約1.5cm、臀部が3~4cm、尾の根元が約2cm、先端は約1.2cmあります。腹側の毛は背中側にくらべると短く淡い色をしていて、日光浴をするとき温まりやすく、また暑すぎる時は、地表の冷気を受けて暑さをしのぐのに適しています。雌雄ともに頬腺はありませんが、肛門腺はあり、とくにオスが発達しており巣穴の入口近くで頻繁にこすりつけます。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/3、臼歯2/2で左右上下合わせて36本です。上顎の外側の門歯は他の門歯より大きく、上顎の犬歯は真っ直ぐ下を向いていますが、下顎の犬歯は内側に曲がっています。尖端が鋭い幅広い臼歯と裂肉歯が昆虫食に適合しています。

えさ

肉食性で主食は昆虫とその幼虫ですが、ほかにもクモ、小型の哺乳類、ヘビ、トカゲ、ムカデ、サソリ、ヤスデ、鳥類、卵、地下茎も食べます。ボツワナで集められた23例の胃を調べたところ、そのうちの91%からカブトムシなどの甲虫類の幼虫が、35%からはサソリが見つかったとの調査結果があります。餌を採るときはパックのメンバーはそれぞれが地表の匂いを嗅ぎながら地下にいる幼虫の匂いを探し、察知すると地面を掘って幼虫を捕まえます。成獣は子どもに餌を分配しますが、ふつうは餌を探しているとき他個体が近づくのを嫌います。水場がない地域では水分を野生のメロンや地下茎から採ります。
飼育下では馬肉、鶏肉、昆虫の幼虫、ミールワーム、青菜、リンゴ、バナナ、サツマイモ、ドッグフード、マウスなどで、その割合は動物園によって違います。

繁殖

野生状態における交尾は地下の巣穴で行われるので、まれに観察される程度です。出産期は8月から11月までと2月から3月までが多く、この時期は暖かい季節と多湿な季節となります。妊娠期間は約77日、一腹の産子数は2~5頭、通常2~3頭です。生まれたばかりの赤ちゃんは体長約5cm、体重は25~36g、目と耳は閉じており、体には薄い毛が生えていますが縞模様はありません。耳は生後10日齢頃、目は生後12~14日齢で開きます。生後3~4週間の間子どもたちは巣穴に留まります。生後2ヶ月齢で親と同じ毛色となります。授乳は49~63日間続き、この間出産した母親以外のメスも乳が出るため、子どもはパック内の複数のメスから授乳されます。生後1ヶ月までの死亡率は21%ですが、離乳から独立するまでは70%の子どもが生き残ります。そして、およそ生後2ヵ月齢で離乳しますが、巣穴から出るときはヘルパーたちが肉食獣たちから守るために付き添い、パックのメンバーが子どもにサソリの捕り方など狩りの方法を教えます。年間の子どもの生存率は20%ですが、成獣では68%となります。生後約10週齢で独立しますが、若オスは親の近くに留まります。生後6ヶ月齢で親と同じくらいの体重になり、生後9ヶ月齢から1歳までに性成熟に達します。飼育下での出産間隔は4ヶ月毎という記録があります。また温度の条件がコントロールされた飼育下では31ヶ月間に11回出産した例が報告されています。 繁殖は優位なつがいだけがおこなうのが普通で、子どもの75%は優位なメスが出産し、優位なオスは群れ内の80%の子どもの父親になります。劣位個体は子育てのヘルパーとなり育児に参加し、餌運び、子守、授乳などを行い基本的に繁殖はしません。
静岡市立日本平動物園の繁殖記録によれば、「母親以外にもオスや兄姉も一緒になって世話をした。授乳は横臥と座って後肢を前方に広げそこに子ども入れて行う2通りの方法で行い、赤ちゃんを運ぶときは1頭ずつくわえて運んだ。生後30日齢では親がマウスを持って行ってもしゃぶる程度であったが、生後40日齢ころバナナは自分で食べ始めた。生後50日齢でマウスを自分で殺すことができた」との報告があります。
野生におけるミーアキャットの寿命は8歳くらいですが、飼育下では12歳を超えることができます。
長寿記録としては1973年2月22日にシカゴのブルックフィールド動物園で生まれて、1993年10月11日にセントルイス動物園で死亡した個体(オス)の20歳7ヶ月があります。

外敵

人間以外では各地に生息するソウゲンワシ、ダルマワシ、コシジロウタオオタカなどの猛禽類が主な外敵となります。空中からの外敵に備えてグループ内の数匹は常に上空を見張っており、猛禽類の姿を発見すると鋭い警戒音を発して群れのメンバーを素早く巣穴に避難させます。この他にもセグロジャッカルやケープコブラそして、子どもは隣のグループのメンバーに殺されることもあります。

データ

分類 食肉目 マングース科をジャコウネコ科に含め、マングース亜科として分類する学者もいます。
分布 アフリカ南部(南アフリカ、アンゴラ、ナミビア、ボツアナ)
体長(頭胴長) 25~31cm
体重 620g~970g
尾長 19~24cm
絶滅危機の程度 ミーアキャットは主食が昆虫類や多足類など人間と競合しないことから、人家近くに生息し牧場などが被害を受けなれば駆除されないので、現在のところはまだ絶滅の恐れは少ないと判断され、国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版のレッドリストでは、低懸念種(LC)にランクされています。

主な参考文献

Estes, R.D. The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991
今泉吉典 監修 世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
Moira J. van Staaden Mammalian Species . No.483, Suricata suricatta . The American Society of Mammalogists 1994.
Nowak, R. M. Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker, S.P. (ed) Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 3, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
佐野 豊・三宅 隆 ミーアキャットの飼育と繁殖 どうぶつと動物園 Vol.30 No.7
(財)東京動物園協会 1978.
祖谷勝紀・伊東員義 ジャコウネコ科の分類. In. 世界の動物 分類と飼育□2 食肉目: 今泉吉典 監修, (財)東京動物園協会 1991.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.(ed) Handbook of The Mammals of the World, 1. Carnivores, Lynx Edicions 2009.
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