No.074 アイアイ – おもしろ哺乳動物大百科 24 霊長目 アイアイ科

おもしろ哺乳動物大百科アイアイ科霊長目ペットコラム

アイアイ属

現在、生息しているアイアイは1科1属1種ですが、絶滅した1種が発見されています。いまから15〜20年前まで、アイアイは長い中指で樹幹をトントンと叩き、その音の反応で中に虫が潜んでいるかどうか探って主食にしている、と考えられていました。しかし、島泰三先生が野生のアイアイを詳細に調査した結果、主食はラミーという木の実であり、昆虫を食べたのは食物の観察時間のうち2%弱であった、ことが判りました。
動物園に勤務していた時代、飼育するときの基本は、野生のときどのような生活をしているか知ることでした。現在、上野動物園は稀少動物となったアイアイを飼育している世界でも数少ない動物園です。飼育に当たっては、島先生の講演やご高著が大いに参考になっていることでしょう。

アイアイ

こんな感じのサルです。

島の南北にのびる山脈沿いのジャングルから海岸線まで、東側は広く南から北まで、西側は中央部の主に海岸線や北側の一部にそれぞれ点在して生息しています。生息域は、熱帯多雨林や多湿の地域、マングローブや、乾燥したやぶから人間が開発した農園まで、様々な環境のなかで生活しています。アイアイは夜行性の霊長類の中で一番大型の種類で、単独で生活していますが、ときにはペアでいるのも観察されています。日中は7〜20mの高い木の上に、小枝や枯葉で作った巣や、座りやすい木の又や洞で休んでいます。巣は数日で代わり、2年間で100カ所以上作った記録があります。オスのなわばりは100〜200haですが、メスは30〜50haと狭くなり、この中を一晩に数km移動しながら生活しています。

からだの特徴

前肢の中指は細長く、この指で果実の実をほじくり出します。後肢の親指だけが平爪で、そのほかの指はすべて鉤(かぎ)爪です。

体色は黒、または黒褐色で毛先がうすい白色になっています。鼻はピンクで両側から目の上にかけて白味がかっています。尾はおよそ10cmの長い毛で被われています。耳は黒く大きて聴力が発達しており、木の中に潜む幼虫の気配を聞くことがでます。目は黒い縁取りに黄赤色で、瞬膜があり、目の乾燥を防ぐことができます。
4肢の指はそれぞれ5本で、後肢の第1指のみ平爪ですが、他の指はすべて鉤爪となっています。最も長い指は薬指で中指より1cm程度長く太いのですが、果実の実を取り出したり、幼虫を取り出すときは細長い中指を使います。匂いつけは、外陰部、頚部、頬部を木にこすり付けて行います。さらに、尿や犬歯で強く咬んだ痕跡を残すこともあり、これらのことを合わせて年齢層や性差、発情の有無などを感知しています。歯式は門歯1/1、犬歯0/0、小臼歯1/0、大臼歯3/3で上下左右合わせて18本です。このうち門歯は一生伸び続けます。乳頭は鼠径部に1対あります。

えさ

野生では、ラミーの実、果実、種子、花蜜、昆虫の幼虫、菌類などを食べています。上野動物園の給餌例は、アボガド、パパイア、ミールワーム、ハチミツ、他を与えています。現地の動物園では、この他に豊富にあるヤシやライチの実も与えています。

繁殖

性成熟は2〜2.5歳で、3〜4歳で初産後、2〜3年間隔で出産します。発情期は決まっていませんが年に1回発情し、数日間続きます。発情中は鳴き声をあげ、外陰部が腫脹し匂いが強くなります。妊娠期間は160〜170日、通常は1産1子で体重は90〜140gです。ちなみに、上野動物園の出産例によると、生後1日齢で、体重85g、体長11cm、尾長13.5cmとあります。生後1ヶ月半齢くらいは巣の中で過ごし、その後も約3ヶ月間は巣の近くにいて、母親が開けたラミーの実や食べ残した食物を食べます。生後4ヶ月半ころから自分で朽木の中にいる幼虫を探し始めます。母乳と母親が残したものを食べる生活が1年間続き、生後2年間は母親と一緒に生活しています。長寿記録はオランダのアムステルダム動物園で、23年3ヶ月の飼育記録があります。

天敵

人間が行う森林開発が生息域を狭め生息数を減らす大きな原因になっています。野生動物としては、マダガスカルで最大の肉食獣で体重が10〜20kgになるジャコウネコの仲間、フォッサがいます。

データ

分類 霊長目 アイアイ科
分布 マダガスカル東部、北西部、及び西海岸中央部
体長 35〜45cm
尾長 約45〜60cm
体重 2〜3kg
絶滅の危機の程度 国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れはないが、近い将来その恐れがあるので近危急種(NT)に指定されています。現在は国立公園や保護区で保護されています。

主な参考文献

AletaQuinn
andDonE.Wilson
Mammalian Species Daubentonia madagascariensis
The American Societyof Mammalogists 2004
今泉吉典 監修 D.W.マクドナルド編動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
島 泰三 どくとるアイアイと謎の島マダガスカル上・下 1997
杉山幸丸編 サルの百科 データハウス 1996
NickGarbutt MAMMALS OF MADAGASCAR
A&C BLACK LONDON 2007
Nowak,R.M. Walker’s Mammals of the world Six Edition
The Johns Hopkins University Press 1999
Weigel,R. Longevity of Mammals in Captivity; From the Living
Collections of the World .E. Schweizerbart’sche, 2005.
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