No.069 ワオキツネザル – おもしろ哺乳動物大百科 19 霊長目 キツネザル科

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キツネザル科

現在、霊長目の化石で発掘された一番古いものは6500万年前のもので、霊長目の一員である私たちの祖先は、この頃地球上に現れたことになります。現存する霊長目ついて、今泉吉典博士は、1988年に12科、58属、約181種類に分類していました。ところが、近年、DNAの解析が盛んに行われ、今まで亜種扱いだったものを分割して種として認めた結果、現在約350種に分ける学者もおりますが、本文は今泉先生の分類を参考にしました。霊長目は原猿亜目と真猿亜目の2つに大別されます。チンパンジーやニホンザルに代表される真猿亜目に対し、原猿亜目は祖先型のサルの体型でネズミやリスのようです。多くの種類は夜行性で、体に分泌腺があり、におい付けをして生活しています。原猿亜目は、コビトキツネザル科、キツネザル科、インドリ科、アイアイ科、ロリス科、メガネザル科の6科に分類しています。ちなみに新しい分類法では、霊長目を直鼻猿類と曲鼻猿類に大別し、メガネザル類は直鼻猿類に入れています。

母親の背中におんぶして移動中。尾がきれいだね。写真家 大高成元氏撮影

キツネザル科には、4属(キツネザル属・ジェントルキツネザル属・エリマキキツネザル属・イタチキツネザル属)約10種が含まれています。いずれもマダガスカル島に生息していますが、本島は8800万年前ゴンドワナ大陸から分離してできた島で独特の動植物が生息していることで有名です。キツネザルは顔がサルと言うよりキツネの顔に似ているところから命名され、レムールとも呼んでいます。体重は1〜4kg、後肢が前肢より長く、地上は4本足で歩きますが、多くの種類は樹上で生活しています。えさは木の葉や花、果実です。

ワオキツネザル

マダガスカル島の南部から南西部の乾燥林、落葉樹林、川辺林に数頭から30頭の群れで生活しています。昼行性で活動は朝と夕方の薄暮動物型ですが、気温が低いときには朝、日光浴をして体を温めてから活動を開始し、日中の暑いときは木陰や岩の陰で休みます。樹上より地上を好み1日におよそ1kmを移動することもあります。群れは母子を中心とした母系集団で、メスのほうがオスより優位で、また同性間でも優劣があります。群れ同士の間にはなわばりがあり、なわばりを巡って争いがあります。成獣のオスは3〜5年で群れを代わります。地上を白と黒の帯で彩られた長い尾をぴんと立てて歩く姿が美しく世界中の動物園で飼育されている人気者です。

からだの特徴

体は背中が灰色で腹部と4肢は灰白色、鼻口部、目の周囲、頭頂部が黒、尾は黒白の帯状になっています。大きさは、頭胴長が35〜45cm、体重は2.3〜3.5kgと大きめのネコ程度ですが、尾が約55〜65cmと長いのが特徴です。手首の黒くなっている部位に匂いを出している分泌腺があり、尾にこすり付けたあと尾を頭上まで上げて左右に振りかざし、性ホルモンを辺りに撒き散らしたり、順位を決めたりしています。足の爪は後肢の第2指が鉤爪以外はすべて平爪です。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。上顎の門歯は小さくてクサビのような形をしています。下顎の門歯と犬歯は前方に突き出し櫛状になっていて、グルーミングのときに使います。鳴き声がとても大きく1km先の人間が聞くことができるほどで、お互いのコミュニケーション手段に使っています。

えさ

野生では、木の葉、芽、花、果実、昆虫などです。

繁殖

発情周期は平均40日ですが、発情するのはわずか1日で、この間に交尾します。群れの中にはセントラル・メールと呼んでいるひときわ大型の個体がいて最初に交尾をします。交尾期は4〜6月、妊娠期間の135日前後を経て、雨季の始まる前、8〜11月(北半球で飼育すると3〜6月)に、1年に1回、1産に1〜2頭、通常1頭を出産しますが双子もまれではありません。新生児の体重は50〜80gで2週間は母親のお腹にくっついて離れませんが、やがて背中にのります。授乳は生後5ヶ月齢まで行いますが、2ヵ月齢頃から固形物も食べ始めています。メスは生後1歳8ヶ月齢で妊娠し、オスは2歳半で性成熟に達します。子どもは1年以内に約50%が死亡し、成獣に達するのは約30%です。長寿記録は飼育下では1967年5月21日にフィラデルフィア動物園で生まれて、2004年10月5日にメルボルン動物園で死亡した37歳4カ月(メス)という報告があります。

天敵

人間以外では、フクロウ、タカなどの猛禽類、フォッサ、ジャコウネコ、飼育下のネコ、イヌなど肉食獣、ヘビに狙われています。

データ

分類 霊長目 キツネザル科
分布 マダガスカル南部から南西部
体長 35〜45cm
尾長 55〜65cm
体重 2.5〜3.5kg
絶滅の危機の程度 国際自然保護連合(IUCN)発行の2008年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないが、近い将来そのおそれがあるので近危急種(NT)に指定されています。

主な参考文献

今泉吉典 監修 世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
今泉吉典 監修
D.W.マクドナルド編
動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
京都大学霊長類研究所編著 新しい霊長類学
杉山 幸丸編 サルの百科 データハウス 1996
淡輪 俊監修・宗近功編著 レムール マダガスカルの不思議なサルたち
NickGarbutt MAMMALS OF MADAGASCAR A&C BLACK LONDON 2007
Nowak,R.M. Walker’s Mammals of the world Six Edition
The Johns Hopkins University Press 1999
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