No.062 ヨツユビハリネズミ – おもしろ哺乳動物大百科 12 食虫目 ハリネズミ科

おもしろ哺乳動物大百科食虫目ハリネズミ科ペットコラム

ハリネズミ科

ハリネズミ科について著名な分類学者のコーベット氏は、ジムヌラ亜科とハリネズミ亜科のふたつに分け、このハリネズミ亜科をハリネズミ属、オオハリネズミ属、インドハリネズミ属、そしてアフリカハリネズミ属の4つに分類しています。今回紹介するヨツユビハリネズミはアフリカハリネズミ属に入り、小型でかわいいことから以前よりアメリカを中心にしてペット化が進んでいます。

ヨツユビハリネズミ

額にある白い帯がこの種類の特徴です。かわいいので品種改良した種はペットで人気があります。写真家 大高成元氏撮影

アフリカのセネガルから中央アフリカ、そしてソマリアの東まで、中央部を西から東にかけて横切るように生息しています。普通は単独で、サバンナ、草原、やぶなどの砂地や乾燥した地域に住み、沼地や森林にはいません。夜行性で昼間休息するときや繁殖するときは地面に掘った巣穴の中で過ごし、ほかにも木陰や岩穴、草を敷いた上で体を丸めて針で体を防護して休みます。ハリネズミは気温が下がると冬眠して寒さを凌ぎ、暑すぎると夏眠することが知られていますが、本種も外温が約20度を下回ると動きが鈍くなります。非冬眠中の心拍数は毎分280〜320回もあるのに対し、冬眠中は18回程度でゆっくりとした代謝で過ごすことができます。
また、ハリネズミ特有の行動の一つに、唾液を体に塗る行動があります。何のために塗るのか未だ明確な答えはないようですが、唾液の匂いで捕食者から身を守り、あるいは性的な臭腺として使われる、さらにハリネズミは針の間にたくさんの寄生虫がいるのでこれらの寄生虫から守るのではないか、などと推測されています。

からだの特徴

モグラかネズミが背中一面に針をまとったような姿で、大きなハリネズミの背中にはおよそ5000本もの毛が変化した鋭い針があると言われます。皮膚の下には強い筋肉があり、とりわけ周辺部ほど筋力が強いので体を丸めることができるのです。そして、敵に襲われたときに体を丸めると体全体が針におおわれ、相手が手を出せない防護の役割を果たしています。他のハリネズミたちと大きく違うところは、他種は4肢の指がすべて5本ずつあるのに、本種は後肢の指が4本であることや、前頭部に帯状の白い毛が生えているところです。また、手足の力はとても強く丈夫な鉤爪を使って穴を掘ることができます。
歯の数は、門歯が3/2、犬歯が1/1、小臼歯3/2、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本あります。上顎の左右第一門歯の間は大きな隙間があって、下の門歯がそこに収まります。体温は通常35度ですが、前後2度の日周変化が可能です。視覚は他の食虫目、たとえばモグラのように見えないことはなく、色彩の区別はできませんが、ものを見ることができます。嗅覚と聴覚は発達しており、えさはおもに匂いを頼りにして探します。

えさ

野生では、昆虫類が主食となりますが、ナメクジなど他の無脊椎動物、カエル、爬虫類のトカゲ、ヘビ、小型の哺乳類のネズミ類、その他、卵、果実、キノコなども食べる雑食性です。飼育する場合には、ハリネズミ用フード、昆虫ゼリー、ミルワーム、リンゴ、ミカンを与えます。

繁殖

アフリカ南部では、10月から3月にかけ、妊娠期間34〜37日を経て、1回に1〜10頭(平均4〜5頭の子どもを産みます。赤ちゃんは、体重約10gで、毛が生えていなく、目と耳は閉じています。出産のときあの針は産道に引っかからないか興味があるところでしょう。母親の体内にいるとき針はすでに存在しているのですが、多量の体液で満たされた皮膚の下に埋もれているので、出産のとき針が胎膜を突き破ることなく分娩されるので問題なく、針は分娩後数日以内に出てきます。生後約2週間で毛が生え始め、14〜18日で目が開いてきます。授乳期間は18〜20日間、離乳は生後4〜6週間でその後徐々に母親と離れていきます。飼育下の記録では性成熟は2ヶ月で、メスは1年に数回の出産が可能です。寿命は5〜10年です。

天敵

フクロウ、タカ、キツネ、イヌ、ネコなどの小型の肉食獣に狙われています。

ペットのハリモグラ

ヨツユビハリモグラをペットに改良した品種は、人になれ易い性格に改善され、体色もシナモンやアルビノ、ノーマルなど、さまざまなバリエーションの品種がいます。さらにハリネズミ用のえさの改良なども進み、飼いやすくなっています。
一方で、ナミハリネズミやマンシュウハリネズミが国内で野生化して冬眠し越冬することが確認され、国内の生態系に被害が及ぶと懸念されています。すでにタイワンリスやアライグマほか多くの動物が帰化動物となり各地で被害をもたらしています。ペットで飼う人は最後まで責任を持って飼育してください。

データ

分類 食虫目 ハリネズミ科
分布 アフリカ(セネガルからソマリア東、アフリカ中部)
体長 14〜21cm
尾長 1〜2cm
体重 200〜300g 飼育した場合、体重は倍増します。
絶滅の危機の程度 国際自然保護連合(IUCN)発行の2008年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。

主な参考文献

阿倍永・横畑泰志編 食虫類の自然史  比婆科学教育振興会 1998
今泉吉典著 世界哺乳類図説 食虫目・皮翼目 新思潮社 1966
今泉吉典監修 世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
今泉吉典監 修動物大百科 6 有袋類ほか 平凡社1986
D.W.マクドナルド編
長坂拓也著
ハリネズミクラブ 誠文堂書店 1997
Nowak,R.M. Walker’s Mammals of the world Six Edition Vol.1
The Johns Hopkins University Press 1999
Corbet, G.B.&Hill, J.E. A World List of Mammalian Species(Third edition)
Oxford University Press 1991
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