No.063 コモンツパイ – おもしろ哺乳動物大百科 13 ツパイ目 ツパイ科

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ツパイ科

むかしから分類学者たちはツパイをどの目に入れるか悩んできました。当初、虫を主食としていたことから食虫目の仲間に入れていましたが、その後、食虫目は盲腸がないのにツパイには盲腸があるほか、樹上生活をする種類や、脳が大きく視覚が発達している点など霊長類の特徴と一致する点が多く、原始的な霊長類として分類しました。しかし、1965年以降、さらに研究が進み、ツパイが霊長目の仲間と育児方法が違う点などを考慮して、独自の目として分類しはじめ現在に至っています。今泉吉典先生は、1科(ツパイ科)、5属、16種に分類し、このうち4属が昼行性のツパイ属、マドラスツパイ属、ホソオツパイ属、フィリピンツパイ属として、残りの1属は夜行性のハネオツパイ属に分類しています。ハネオツパイは夜間の生活に適応して、目のつくりが夜行性動物と類似し、耳が他の属より大きく聴覚が発達しました。
今回はこれらの中からツパイ属のコモンツパイについて紹介します。

コモンツパイ

コモンツパイ – 耳と顔がリスとちょっと違うでしょう。写真家 大高成元氏撮影

野生では広いなわばりの中でオスとメス、及びその子どもたちでグループを作って生活しています。オスはこの広いなわばりの中で、ふだんは単独で行動しています。彼らはなわばりの印として、においの強い糞と尿を数箇所に排泄しています。また、胸の部分にある臭腺を木にこすり付けてなわばりの主張をするだけでなく、子どもの体にもこすりつけて臭いを付け、自分の子を識別しています。時々悲鳴のようなキーキーした声を出しますが、捕食者に対する警戒音といわれます。半地上、半樹上生活ですが、日中のほとんどは地上ですごし、水も良くのみ水浴も好きです。

すんでいる場所

海抜1000m以上の熱帯多雨林に、500〜8000cmのなわばりをもって住んでいます。多くは木の茂みや、木の洞、木の根元、落ち葉の下などに隠れて生活しています。

からだの特徴

細めのタイワンリスに長い口吻をつけた感じです。全身の毛は柔らかく、尾は体長とほぼ同じ長さで、厚い毛におおわれています。体色は背がオリーブ色から暗褐色、腹部は乳白色から橙赤色です。乳頭は種類ごとに数が違いますが、本種は3対あります。4肢にはそれぞれ5本の指があり、指先にはかぎ爪があります。かぎ爪は虫を探すとき地面を掘るのに役立っています。目は顔の側面にあり、視覚範囲が広く視力も優れています。歯の数は門歯2/3、犬歯1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3、左右上下合わせて合計38本で、上顎の門歯が下顎より計2本少なくなっています。

えさ

えさは、昆虫、ミミズ、小型の爬虫類、ジムカデ類、ヒル類、ナメクジ、果物、木の芽、種子なども食べます。動物園では、昆虫、果物、野菜類、種子類、ミールワームを与えています。

繁殖

繁殖期は、12月に発情して2月に出産するか、2月に発情し4月に出産するケースが多いようですが、一年中出産例があります。妊娠期間は40〜52日、1産で1〜3頭の子を産みます。ツパイの特徴は、2つの巣を作りそれぞれ利用目的に合わせて使い分けていることです。一つはふだん隠れ家として利用し、もう一つは繁殖用に使います。出産時の体重は6〜10g、赤子で耳と目は閉じていますが、生後約10日で耳が、約20日で目がそれぞれ開きます。赤ちゃんは生まれて数分後には母親のお乳を飲みますが、その後、授乳は2日に1回で5分から10分間の授乳を約5週間続けるだけで育つのです。授乳間隔が長いひみつは高栄養価のお乳にあります。ツパイのお乳は、脂肪の含有量が約26%、タンパク質は約10%もあります。ちなみに人間は、タンパク質が1.1%、脂肪が3.5%です。母親は赤ちゃんの世話を霊長類の仲間のようにしないのも特徴のひとつです。生後約3ヶ月で性成熟に達し、約4.5ヶ月で最初の出産をします。飼育下の寿命は約9〜10年ですが、12年5ヶ月の例があります。

データ

分類 ツパイ目 ツパイ科
分布 ボルネオ島、マレー半島、スマトラ島、インドシナ
体長 14〜23cm
尾長 14〜20cm
体重 100〜300g
絶滅の危機の程度 国際自然保護連合(IUCN)発行の2008年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。
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