ウアカリ属
ウアカリ属は、これまで(1)シロウアカリ(2)クロウアカリ(3)アカウアカリの3種類に分類していましたが、最近はハゲウアカリとクロウアカリの2種に分類し、ハゲウアカリの亜種として、シロウアカリとアカウアカリに分類しています。この他にも更に亜種を細分する学者もいます。
サルの仲間は種類が多く顔も千差万別でそれぞれ特徴がありますが、ハゲウアカリほどインパクトの強いサルは少ないでしょう。顔から前頭部にかけて毛がなくピンクから真紅の顔は、一度見たら忘れられないほどです。
ハゲウアカリ
ハゲウアカリは南米のアマゾン川上流のペルーとブラジルの国境地帯に生息しています。熱帯雨林の冠水するような小川が流れる原生林や湖沼地を好みます。樹層では高層から低層までどの層にでも生息していますが、上層部を好みます。通常は5〜40頭程度群れで生活し、現地の人によれば、100頭以上の大きな群れを作ることがある、と言われます。昼行性で、早朝から活動をはじめ、暑い日中は休息して、午後涼しくなると再び遊動しながら餌を探します。ふつう4足歩行ですが、両手をあげて2足歩行したり、樹幹を跳びはねて移動することもあります。また、乾季には地上に降りて種子や実生を探し食べます。遊動の合間に、木の上で座り、あるいは腹ばいになって休息します。夜間は群れが分散して高い樹上で眠ります。コミュニケーションは、顔に毛がないことから表情も豊かで、さまざまな声と共に状況に応じて変化させます。さらに短い尾はイヌのように、上げたり下げたりすることで感情の意思表示となります。その他、尾腺からの臭い付けや尿洗い行動もみられます。
からだの特徴

こんなサルにジャングルの中であったらゾッとしません?写真家 大高成元氏撮影
オマキザル科のなかでは中型で体重は3kg前後です。ハゲウアカリの中で、シロウアカリの体色は全体に白く、顔から前頭部にかけて毛が生えてなく、ピンク色を呈しています。アカウアカリの体毛は赤みを帯びた栗色で、前頭部と頭頂部が無毛かまばらに生え、顔の色が真紅なので一層際立っています。別種のクロウアカリは、顔と頭部に黒い毛が生えているので簡単に識別できます。肩から背にかけ長い毛が生えており、短いマント状となっています。また、新世界のサルの仲間でとりわけ尾が短く、15cm前後で房のような毛で被われているのも特徴の一つです。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪です。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。歯の特徴は、下顎の門歯が前方に傾き、犬歯が外側に反っています。頬袋はなく、乳頭は胸部に1対あります。
えさ
主食は果実の種でおよそ70%を占め、未熟及び完熟した果実の種を食べています。その他に果実、花、花の蜜、葉、芽、そして、昆虫やカメの卵を食べた報告もあります。
繁殖
繁殖期は10月〜11月の乾季が出産のピークとなります。出産間隔はおおむね2年間です。発情周期は14〜48日で約1週間続き、この間の数日間に交尾します。妊娠期間は約6ヶ月間、通常一産一子です。初産は3歳の記録があります。オスの性成熟は6歳です。赤ちゃんの顔と頭部は灰色がかっていて毛が生えています。生後1ヶ月間はほとんど母親から離れません。3〜5ヶ月齢は母乳を飲み、固形物は4〜6ヶ月齢で食べはじめます。出産から3〜4ヶ月間は母親の腹部や横腹にしがみついていますが、その後背中に乗って移動します。6〜7ヶ月齢で群れの他のこどもに近づき一緒に遊びはじめます。頭部や顔の毛は3歳になると脱毛して、成獣と同様にピンクや真紅となります。長寿記録は、ケルン動物園で2005年1月現在35年10ヶ月飼育されてなお生存中の記録があります。
天敵
人々が生息域の森林伐採を進めた結果、生息域の減少や分断されたこと、及び食料にするための狩猟が生息数減少の主要な原因です。野生動物の外敵としては、猛禽類のオウギワシ、ネコ科のオセロット、ヘビなどがいます。
データ
分類 | 霊長目 オマキザル科 |
分布 | 南米アマゾン川上流 ブラジル北西部とペルー東部 |
体長 | 37〜57cm |
尾長 | 15〜16cm |
体重 | オス3.5kgメス 2.7kg |
絶滅の危機の程度 | 国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、ハゲウアカリは絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定され、現在は国立公園や保護区で保護されています。また、クロウアカリは現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。 |
主な参考文献
伊谷純一郎 監修 D.W.マクドナルド 編 |
動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986 |
今泉吉典 監修 | 世界哺乳類和名辞典 平凡社1988 |
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二 | 世界のサル 毎日新聞社1968 |
杉山幸丸編 | サルの百科 データハウス 1996 |
Gron, K.J.(Reviewed by Barnet,A.) | Primate Factsheets: Uakari(Cacajao )Taxonomy, Morphology, Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2005 |
Welker, C. and Schaefer-Witt, C. | New World Monkeys, In(Parker S.P. editor) Grzimek’s Encyclopedia of Mammals Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990 |
Nowak,R.M. | Walker’s Mammals of the World Six Edition The Johns Hopkins University Press ,Baltimore 1999 |