No.089 コモンウーリーモンキー(フンボルトウーリーモンキー) – おもしろ哺乳動物大百科 39 霊長目 オマキザル科

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ウーリーモンキー属

ウーリーモンキー属はヘンディーウーリーモンキーとコモンウーリーモンキー(フンボルトウーリーモンキー)の2種類に分類しています。前者は、1802年初めて発見されて以来、1925〜1926年に約120年ぶりに再発見され、その後情報が途絶えました。そして、1974年に再発見、生存が確認された種類です。アンデス山地の一部、ペルーのアマゾン川支流域の標高2,000m前後の森林に生息するだけで、絶滅寸前の状態にあり今後の生存が懸念されています。後者は、南米のアマゾン川の中流から上流にかけて広く生息しています。角刈りのような頭と、羊毛のような柔らかい毛から、別名羊毛ザルの呼び名もあります。

コモンウーリーモンキー(フンボルトウーリーモンキー)

南米のコロンビア北部から南はボリビア北部に至るアマゾン川流域に広く分布しています。生息地によって異なりますが、標高1,800〜3,000mの亜熱帯及び熱帯雨林で、湿潤な川辺林や果実の実る二次林の樹冠で生活しています。群れは10〜50頭と幅があり、成獣の雌雄と子どもや母子、そして、オス同士などの混成群ですが、遊動するときは2〜6頭の小さな集団に別れます。昼行性で夜間は高い樹冠で眠ります。匂いつけは、成熟した雌雄やワカモノが胸部にある分泌腺を木の枝にこすりつけ、肛門腺や尿による匂いつけも行います。このほか、尾の上げ下げ、顔の表情、口の動き、枝ゆすりなどさまざまなロコモーションや声による情報交換も報告されています。

からだの特徴

がっしりとした体格で力強く感じられます。写真家 大高成元氏撮影

オマキザル科のなかでは大型で、オスがふつう7〜8kg、メスの体重はオスの約65%で5〜6kgと小型で雌雄の体格差が大きいです。4肢や尾が太く、体全体が筋肉質でがっしりとした体格です。体毛は短く密に生え、色は灰色から濃オリーブや黒褐色、黒色ですが、顔、手、尾は一層黒色が強いです。成獣のオスは胸部が赤褐色で、頭部のこぶ状の隆起はメスより大きく発達しています。前肢の指は、クモザルが4本なのに比べ、親指がありますがヒトのように親指が他の指と対向してなく、5指共に同方向を向いています。尾の先端部の約3分の1は内側に毛がなく尾紋があり、感覚が敏感で物をつかんだり、つまみ上げたりすることができます。樹間を移動するときブラキエーションをしますが、尾を補助的に使うことからセミブラキエーションといわれ、安全に樹上生活を過ごすことができます。メスの生殖器はオスに似ており外見上の性差は簡単にできません。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。犬歯はオスのほうがメスより3分の1程度長くなっています。頬袋はありません。乳頭は胸部に1対あります。

えさ

野生時の主食は果物で約80%を占め、そのほか、木の実、若葉、花や花の蜜、卵、クモ、昆虫などの無脊椎動物を食べます。果物が少ない時期や場所では、葉やその他の割合が増加します。動物園では、リンゴ、バナナ、パイナップル、トマト、人参、ミカン、青菜、蒸かしたサツマイモ、サル用ペレット、ゆで卵などを与えています。

繁殖

交尾は年間を通して見られますが、繁殖は8月〜12月に見られます。妊娠期間は約7ヶ月で通常1産1子でまれに双子が生まれます。およそ21日の短い月経周期があって、この間に出血もわずかにあります。また、発情は3〜4日間続きます。性成熟はメスが4歳、オスが5〜6歳で、オスの体が成熟するのは8歳です。初産年齢は5〜7歳、出産間隔は3年です。赤ちゃんは分娩後自力で母親のお腹に這い上がり、しがみつくことができます。赤ちゃんの手のひらと足の裏は濃いピンク色です。生後2週間は母親のお腹にくっついていますが、その後は脇から背中に移動します。生後8週齢で母親から始めて離れ、4〜6ヶ月齢はまだ母親の近くでほとんど過ごします。授乳は16〜20ヶ月齢まで行います。優位オスが育児を手伝うとの報告があります。
長寿記録は、日本モンキーセンターで29年1ヶ月の飼育記録があります。

減少している原因

人間が生息域の森林伐採を進めた結果、生息域の減少や分断されたことが最も大きな原因です。その他、ペットとして人気が高いのですが、1頭の赤ちゃんを捕るために母親や家族を殺すことや、食料にするための狩猟も原因の一つです。野生動物で主な外敵は、猛禽類のワシやタカとジャガーやオセロットなどのネコ科動物です。

データ

コモンウーリーモンキー(フンボルトウーリーモンキー)

分類 霊長目 オマキザル科
分布 南米のコロンビア、ボリビア、ベネズエラ、エクアドル、ペルー、ブラジル
体長 45〜65cm
尾長 55〜75cm
体重 5.5〜10.0kg
絶滅の危機の程度 国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、コモンウーリーモンキーは絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定され、自然公園の保護区で保護されています。

主な参考文献

今泉吉典 監修 世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二 世界のサル 毎日新聞社1968
杉山幸丸編 サルの百科 データハウス 1996
ジョン・R・ネイピア、プルー・H・ネイピア
伊沢紘生訳
世界の霊長類 どうぶつ社1987
林 壽朗 著 標準原色図鑑全集20 動物Ⅱ 保育社 1968
Welker,C. and Schaefer-Witt,S. New World Monkeys. In ( Parker, S.P. editor) Grizimek’s Encyclopedia of Mammals Volume 2, : McGrow-Hill Publishing Company 1990
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