食肉目 イヌ科
セグロジャッカル
ジャッカルはアフリカ、ヨーロッパ、中近東から東南アジアにかけて生息し、セグロジャッカル、ヨコスジジャッカル、キンイロジャッカル、アビシニアジャッカルの4種に分類されています。今回取り上げるセグロジャッカルは南アフリカと東アフリカのケニア、スーダン、エチオピアに生息しています。開けた草原や低木林、海岸近くの砂漠に、時には3000m級の高地に、単独かペア、あるいは小さな家族群で生活しています。薄暮動物で朝夕に活発に活動しますが、寒い時は昼も餌を探します。自分で掘ったり、ツチブタなどほかの動物が使った穴や古くなったアリ塚、岩の割れ目などを利用して休息します。
動物園の飼育例によれば、性格はとても神経質だが、穴掘りが上手で、斜面に地下1m位の深さを素早く掘り、その中で休む、と報告しています。ふつう時速8~10kmで歩行し、南アフリカの調査報告によれば、一晩に約12kmや40kmを移動した記録もあります。行動圏の広さは南アフリカで3~12km²、平均約11km²でお互いに重複しています。行動圏のすべてあるいは一部分はなわばりとなっていて、その境界を定期的に巡回し尿や糞で匂いつけをしますが、ペアの場合、単独個体の倍の匂いつけをします。群れは雌雄ともに順位制がみられ、上下関係は顔の表情や行動で表します。声は重要な情報源で、なわばりの宣言、警戒、威嚇、子どもを呼ぶ声などが知られ、また、相手の声に反応し返事をします。
からだの特徴

背中の霜降りの黒い毛が鮮やかに写っていますね。写真家 大高成元氏 撮影
全体的にオオカミよりキツネに似た体形でほっそりしています。背中は尾端まで霜降りのように黒くなっています。横腹から4肢は淡褐色で、前胸部から喉にかけて白く、尾は毛が密に生えて褐色、先端は黒です。耳は大きな3角形で立っています。前肢は5指、後肢は4趾で、乳頭数は4対です。吻が細く尖っており、犬歯は細く鋭くなっています。歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、小臼歯4/4、大臼歯2/3で左右上下合わせて42本です。
えさ
群れで協力して狩りをする場合、トムソンガゼル、トピなどレイヨウ類の成獣も倒します。そのほか、ノウサギやネズミのなかまからトカゲ、ヘビなどの爬虫類、カエルやカニ、昆虫、屍肉、海鳥や卵、果物など何でも食べる雑食性です。食べ残したものは、落ち葉などをかぶせて保存します。
繁殖
年1回繁殖し、交尾期は5~8月で7~10月に出産します。発情期の前からペアになり、関係は長く続き8年間続いた記録もあります。妊娠期間は60~65日で1産3~9頭、平均4頭を出産します。生まれたばかりの赤ちゃんの体重は約160gで、黒みがかった毛におおわれ、耳は垂れ、目は閉じており、開くのは生後8~10日齢です。母親は出産後3週間、巣穴で90%を赤ちゃんと一緒に過ごし、授乳や体を温めるなど世話をします。生後8~9週齢で離乳します。生後6ヶ月齢頃から狩りの仕方を覚え、その後子どもの一部はヘルパーとして群れに残り、残りの個体は群れを離れてゆきます。群れの基本的な構成メンバーは、両親とその子どもですが、ヘルパーとして群れに残った前年生まれの子どもが、これに加わることもあります。ヘルパーはこの間に、狩りや育児方法を習得すると共に、獲物をそれぞれが巣に持ち帰り、待っている母子に与えます。他にも、ハイエナなどの外敵から群れを防衛するときに役立ち、ヘルパー自身の居場所の確保にもなっています。1頭のヘルパーがいる家族は3頭の子どもが生き残ることができますが、いない場合1頭しか生き残れません。
長寿記録としては、シカゴのブルックフィールド動物園で2005年1月現在飼育中の個体の16歳8ヶ月という記録があります。
外敵としては、ヒョウ、ハイエナ、チーター、ヒヒ、ニシキヘビ、猛禽類がいます。
データ
分類 | 食肉目 イヌ科 |
分布 | アフリカ東部および南部 |
体長(頭胴長) | オス71~81cm メス 67~71cm |
体重 | オス6.4~11.4kg メス 5.9~10.0kg |
尾長 | オス 31~33cm メス 27~32cm |
肩高 | オス・メス 38~48cm |
絶滅危機の程度 | 分布域が広く、個体数も多いことからIUCN(国際自然保護連合)発行の2010年版のレッドリストでは、低懸念(LC)種にランクされています。 北アメリカのコヨーテと共に草原の掃除屋の異名があり、何でも食べることや広い生息域を持っているため、絶滅の危険は少ないと考えられています。 |
主な参考文献
今泉吉典 監修 | 世界の動物 分類と飼育2食肉目 (財)東京動物園協会 1991 |
今泉忠明 | 野生イヌの百科 データハウス 1993 |
桑原 久、山下輝光、小森 厚 | ジャッカル(動物園教室 62)どうぶつと動物園Vol. 22 No.9, (財)東京動物園協会 1970 |
Nowak, R. M. | Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999. |
Estes, R.D. | The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991 |
Parker, S.P. (ed) | Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990. |
Walton, L. R. & Joly, D. M. | Mammalian Species No. 715. Canis mesomelas . The American Society of Mammalogists 2003. |