オポッサム科
有袋目といえば、オーストラリアを連想し、ほかの国には生息しないと思っていませんか。じつは、オーストラリア以外にも有袋目のなかまは分布しています。その中でも特にオポッサム科は種類も多く、分布もひろくて、カナダから中央アメリカ、南アメリカにかけて生息しています。その秘密は地球の地殻の変動に由来します。今からおよそ2億年前、アフリカ、南米、オーストラリア、南極はまとまって一つの大きな大陸でゴンドワナ大陸と呼ばれていました。やがてこの大陸は離散し、おおかたの有袋類はオーストラリアで独自な進化を遂げたのです。そして、もともと北米に現れたオポッサムの仲間はアメリカ大陸に留まったのです。
キタオポッサム
すんでいる場所とからだの特徴
キタオポッサムはおよそ40cmの大きさで、おもに森林地帯を好みますが、草原なども利用し、広い範囲で生活しています。樹上生活に適応し、指は前肢、後肢ともに5本あり、後肢の親指が他の指と向き合っていて木の枝を握ることができます。爪は後肢の親指にはありません。また、尾は長く、根元には毛が生えていますが、その先は毛のない細かいウロコ状の皮膚で、木の枝に巻きつけることができます。歩行は人間やクマのように足の裏を地面に付けて歩きます。

キタオッポサム – 写真家、大高成元氏撮影
下毛は羊毛のように柔らかですが、上毛はかたくて長くなっています。色は、灰色が多く、まれに白色もいます。耳は大きく聴覚や嗅覚がよく発達しています。育児のうは深さが2〜3cmで、内部にはふつう13個の乳頭があり、中央にある1個を中心にして円を描くように付いています。
えさ
口は少しとがっていて上あごには鋭い前歯が5本あります。雑食性でネズミ、トカゲ、カエル、鳥や卵、昆虫、果実、木の根など何でも食べます。このように何でも食べることや多産であることが現在の繁栄につながっているのでしょう。
繁殖
ふつう単独生活をしていますが、1年に2回の繁殖期につがいとなります。妊娠期間は13日くらいで、8〜14頭を産みます。このように多くの子どもを生んでも育つのは7頭くらいです。カンガルーと同様に、総排泄孔から体長が約1cm、体重0.1gの未熟児で生まれた赤ちゃんは、自力で育児のうまで這っていきます。この時の赤ちゃんは、まだ体には毛が生えていず、目も閉じていますが、前肢は比較的よく発達し、指には爪があります。育児のうに入った赤ちゃんは約2ヶ月乳頭に吸い付いたままです。離乳は生後100日くらいで、それからまもなくして独立します。子どもは母親の背中に乗って移動します。野生のときの寿命は2年程度といわれますが、飼育下では7年の記録もあります。
特殊な行動
敵に追い詰められ、逃げ場がなくなると、目がどんよりとして、口から舌がたれあたかも死んだようになります。死んだと誤解した敵がいなくなると、起き上がって逃げるといいます。肉食獣の多くは死んだ動物も食べるので、どの程度死んだまねで危機を脱することができるか疑問です。しかし、この現象は自分の意思に関係なく、体が勝手に反応して起こるようです。
データ
分類 | 有袋目 オッポサム科キタオッポサム |
体長 | 37〜45cm |
体重 | 1.9kg〜2.8kg |
尾長 | 28〜37cm |
分布 | カナダから中央アメリカ |
絶滅危機の程度 | LC(低危険種)現在のところは分布も広く、生息数も多いので、絶滅危機種に該当しない種有袋目 |