午年にちなみ馬にまつわる話し

動物一般

年初めに今年の干支にちなんでウマにまつわる話をいくつか紹介しましょう。

大願成就に奉納する絵馬の歴史

家族や恋人、あるいは一人で初詣に神社へ参拝し絵馬を奉納して大願成就をお願いした方も多いと思います。この絵馬の由来なのですが、昔は貴族など特権階級の方が生きた馬を奉納したそうです。当時のウマは現在ならば車が買えるほどの貴重な動物ですから庶民では手がでません。そこで庶民も奉納できるように1000年くらい前から木の板にウマの絵を書いて祈願するようになりました。人々は神社に絵馬を奉納し願い事を託したことで、心が晴ればれとして正月気分になったことでしょう。
昔から現在まで変わらない絵馬の役割と言えそうです。

いつ頃からなんのために家畜にしたのでしょう

ウマの家畜化はいまからおよそ6,000年前と考えられていますが、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタなどの大型の家畜はすでに約1万年前から飼育が始まっていました。ウマの方が家畜化は遅いのですが、家畜を飼う当初の目的は食糧確保のためで、初期の動物の方が扱い易く、乳や毛皮、羊毛など利用できる点で優れていたと推察できます。

家畜化した野生ウマについては諸説ありますが、アジアや西欧に生息していたタルパン、シンリンタルパン、モウコノウマの3種が家畜ウマの原種と考えられています。野生のタルパンはすでに絶滅し、現在残っているのはモウコノウマ1種類です。この記事の写真の馬がすべてモウコノウマです。

野生のモウコノウマは絶滅しましたが1899年に初めて飼育に成功しました。そして、ヨーロッパの動物園で飼育していた個体が幸運にも生き残り繁殖した約400頭をモンゴルの野生保護区に野生復帰させるために放すほどになっています。世界中のモウコノウマは本種の保存をするために血統登録を行い、近親交配を避けながら世界各地の動物園に分散させて飼育管理をしています。多摩動物公園は昨年すばらしいモウコノウマの飼育展示場を完成させて飼育しています。興味のある方は足を運んで背中の素敵なたてがみをなびかせ逞しく走る姿を楽しんでください。

アニマルセラピーで活躍

日本でアニマルセラピーと言えば、イヌやネコが有名で家族構成が少ない、あるいは高齢化で話し相手の少ない家庭ではこれらのペットが家族の一員となっています。また、病院や介護施設などを訪問してペットと触れることで心を癒してくれる、ことが知られています。

一方、欧米ではイヌ、ネコの他に乗馬がアニマルセラピーに良いとされています。背景にはヨーロッパ人の祖先は狩猟民族で、ウマが家畜化されると現在の車と同様に彼らの生活にとってかけがえのない有能な動物になりました。肉用から使役、そして娯楽の乗馬、競馬やポロ競技、と時代と共に変遷しましたが、人々の生活が豊かになる一方で、その目的の一つに乗馬がアニマルセラピーとして脚光を浴びるようになったのです。背中が平らで目の前に頭を上げればちょうど良い高さに頸があり、人間が乗るために生まれてきた動物と表現する人もいます。今から20~30年前サーカスが来日するたびにその裏側を訪問して、どのように調教しているかお話を伺っていました。10頭くらいを調教していた女性のウマの調教師は狭い曲芸場で回転させたり、後肢だけで歩かせたり、さまざまな芸を披露していました。長い鞭を持っていましたが叱るのではなく、合図を送るために必要だそうです。ウマは優しく接すれば良く理解し、反応するので厳しく叱ってはダメと言いながら愛しそうに頬を頸に寄せていました。ウマと接するチャンスが多い欧米人はウマの記憶力や人間に対する反応が細やかで乗り手の意思を素早く読み取ることができることを良く知っています。

ウマはまっしぐらに駆け抜けると表現しますが、成就することを目標にお互いに頑張りましょう。

本年もエレファント・トークをよろしくお願い申し上げます。

川口幸男・中里竜二・大高成元(写真家)
伊藤政顕・新宅広二
川口明子・金井慎人・金井理恵

干支の午について、詳しい情報を知りたい方は、へーベルハウスのホームページを参照してください。

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